その他

反省する人・しない人

「僕は君の秘書じゃない。君が僕の秘書なんだ」
「申し訳ございません。うっかりしておりました。以後、厳重に気をつけます」、そう詫びているのは社長秘書の K。
社長の W は、多忙さをすこしでも緩和しようと今年の春に女性秘書を採用した。
「秘書経験あり」と履歴書に書いてあったが、詳しく聞くと、秘書的な仕事も兼務していたことがあるという程度だった。

今回の K のミスは、出張の手配漏れ。
今から乗る新幹線のEX予約がされていなかったのと、今夜の恵比寿のホテルが取れていなかったというミス。
先日は速達郵便を丸1日机に放置したこともあった。
「このままじゃ、君に補助者が必要だね」と皮肉を言いながら社長はタクシーに飛び乗り、EX予約を自分でした。
行きつけの恵比寿のホテルに電話もしたが、空いてないといわれた。
新幹線で別の宿をじゃらんで探すしかない。
会議資料に目を通しておきたかったのに・・・

W 社長に限ったことではないが、部下の「以後気をつけます」というセリフは信用しないほうがいい。
それは咄嗟にでてくる常套句であって、反省にも対策にもなっていない。

「以後」とはいつか?
「気をつける」という心構えはもう結構だ。
具体的に作業手順をどのように変えて再発を防ぐのかを聞きたい。
それが聞けないうちは、反省したことにはならないし、その部下の仕事が不安でしようがなくなる。

「できる部下」はそれを言われなくてもやっている。
できる部下は一度のミスで学習し、同じミスを再びくり返すような愚は犯さない
そういう部下が言う「今後気をつけます」は信用できる。
それ以外の部下には「対策書」を要求すべきだし、対策書が3枚貯まればペナルティの対象になる「始末書」を提出させねばならない。
部下の対策書をみて、「たしかにその方法なら同じミスを犯さないな」とこちらが納得できるまで再発防止策を練り直してもらう。

以前私も部下にそのように接したことがある。
対策書を何枚も書かされた部下は(今はいないアルバイトだが)「そんなに私が信用できませんか?」と居直った。
私も感情的になり「ああ、信用できないね」と言ってしまったので、翌日から来なくなった。
今なら冷静に「あなたの人柄は信用しているが、あなたの仕事はまだ充分信頼できるまでには至っていない」と言えたのに。

反省とは、内省する時間をもつこと。
そこで学習し、再発防止策を記録する必要がある。
記憶を頼りにして記録しないようでは学習したことにならない。

なかには、コミュニケーションの食い違いから人間関係のトラブルに発展することもある。
他人と言い争いをしても、成長する人はちゃんと反省する。
感情的になってしまい、「私は悪くありません。悪いのはあの人です」と考える人は反省しない。
どんな場合でもコミュニケーションにおいて100対0はあり得ない。
できる人の反省とは、自分が良くなかった可能性を考え、自分の発言や行いに改善の余地があることを潔く受け入れる人だ。