人事労務組織

職場に緊張感があるから儲からない

製造業専門の生産性改善コンサルタント X 氏とお会いした。
その工場が儲かっているかどうかは、工場をグルッと一周すればだいたい分かるという。しかも始業前や終業後でも充分わかるという。
興味深い内容だったので、X 氏の発言を要約してご紹介したい。

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一般的には、工場の面積が広くて無人の大型機械が稼働している工場ほど儲かりやすい。稼働率さえキープすればいいからだ。
だが、小さい工場で小さい機械を動かしている工場は、労働集約型になるため、人件費のウエイトが高くなり、儲かりにくくなる。
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「なるほど、守備範囲か」と私は思った。小売業や飲食業でも一人あたり守備面積が広いほど儲かりやすい。私がそういうと、X 氏は大きくうなずいておられた。

◇生産性改善、ひとつめのポイント:
ひとりあたり守備面積を広くする。

次に X 氏は計画の緻密さと工場の空気についてこう述べた。

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儲かっていない会社ほど工場に緊張感がある。鉄道時刻表のように、精密な生産計画があるのは概して、小さい工場である。当然、社員もピリピリしていて、私のような部外者が話しかけ辛い雰囲気がある
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「ちょっと待ってください」と私。
緊張感がある職場は儲かっている証拠と思っていたが、工場では逆なのだろうか?
私は毎日、分刻みの予定表を作ってその通りに動いているが、だから生産性が上がらないのだろうか?
小さい仕事を緻密に管理して行ってもよいが、日本でそれが成立するのは高付加価値な仕事だけ。低付加価値で労働集約型の仕事は人件費の安い国にもっていかれると X 氏。

X 氏の話はお構いなく続く。

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ところが儲かっている会社は、スタッフの心に余裕があるので話しかけやすい。怠けているわけではないが、猛烈に働くのは機械であって人ではない。そういう工場では、長年の経験や職人芸は必要なく、メカトロに関する知識をもった若い社員が機械を操作している場合が多い。
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私も20代の前半は製造業の工場で働いていたが、周囲はベテランだらけだったのを思い出す。
そういわれれば先週訪れた製造業の N 社にしても、社員が若い。ベテラン職人らしき人をほとんど見かけなかったのは、製造業の現場が変わってきている証拠だろう。

◇生産性改善、ふたつめのポイント:
人間が緊張感をもって仕事をするのでなく、仕組みと機械をフル稼働させよう。そして、長年の経験と職人芸が求められる部分を可能なかぎり減らすこと。

社員がやれる生産性改善には限界がある。無駄をなくすとか、ロスを減らすなどのディフェンシブなことしかやれない。
ところが、一人あたり守備面積を広くするとか、仕組みと機械をフル稼働させるなどは、経営陣が考え、決めることがらである。

たまにはそうしたカルチャーショックを受けに先端企業の現場を見るのも悪くない。

来週の火曜日に武蔵野さんの号外広告をお届けするが、そのセミナーなどもまさしくカルチャーショックものだと思う。キーワードはパソコンをロボットが動かす、というもの。