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ジャイアンツ開幕初戦・二戦より

※今日は野球の話題です。野球がお好きでない方、ジャイアンツファンでない方は読み飛ばしてくださって結構です。

3/30(金)東京ドーム。読売ジャイアンツの開幕戦を観るために、J 氏と二人で22番ゲート口で待ち合わせした。
17:25、我々が席に着くと同時にオープニングセレモニーが始まった。ビールを買うのはセレモニーのあとにしよう。
いつものショーじみた演出に比べ今年のセレモニーは地味だが、野球ファンにとっては選手紹介中心の今年の方が好感がもてる。乃木坂46のメンバーから5人が国家斉唱に選ばれて来ていた。

巨人も阪神も一番自信があるピッチャーを開幕戦にぶつけてくる。いわゆるエース同士の投げ合いは菅野とメッセンジャーだった。
どうみても1点勝負の投手戦になるかと思いきや、菅野が乱調で阪神が先取点を奪う。

筋金入りの巨人ファンである私と J 氏はオレンジタオルを首に巻き、試合前から「今年の巨人は若手がいい」「上原も楽しみだね」と饒舌だった。
だが菅野は打たれっぱなしで、打線は沈黙したまま。試合途中から声援はおろか二人の会話も途切れ、ビールはわずか2杯ずつしか喉を通らない。終盤はため息が多くなった。
試合終了後は恒例の二次会もなく、水道橋駅で別れた。

この一戦に賭けていた私はホテルに戻っても眠れず、翌日(土曜日)の名古屋帰宅を遅らせる決心をした。ジャイアンツが勝つところを生でみたい一心から、当日のチケットをネットで手に入れ、
開幕第二戦も応援に出向くことにした。

今度は一人だから声援は送りづらいがオレンジタオルを振り回すことはできる。
だが、この試合もジャイアンツの先発・田口が乱調。3回までで4失点し0-4の劣勢。
「またか。昨日の延長じゃないか!」トイレで声をふりしぼった。
内心ではオレンジタオルをゴミ箱に投げ捨て、名古屋に帰ろうと思った。気の早いジャイアンツファンは事実、そのようにしていた。

試合が動いたのは3回の裏だった。岡本選手の2点タイムリーで2対4に。その後も相手の藤浪投手の制球の乱れからノーアウト満塁のチャンスが到来。
場内ボルテージが急上昇したところへ「ピンチヒッター阿部慎之助」がコールされて前半の最高潮に。そこで阿部慎之助が押し出しのフォアボールを奪い3-4の一点差に。
阿部ほどの大打者がひとつのフォアボールを奪ってベンチに向かって吠えた。本来なら多少のボール球に手を出してでも、自ら打ってヒーローになりたい場面。
その気持ちを押さえ、チームの勝利第一の姿勢を見せてベンチは一体化した。

その気迫が他の選手に乗りうつった。その後、2アウトを取られたがバッターは坂本勇人。昨日・今日と坂本はノーヒット。
開幕前のオープン戦からバッティングの不調が続き、これほどの打者が「バッティングって難しいですね」と周囲にもらすほどの不振。巡り合わせが悪いものだ。
だが、坂本がここ一番の場面でセンター前にはじきかえし、ついに同点に追いついた。スター選手が不振をはねのけての同点打。ドーム全体が一体化した。
「やっと打てた。しかも大事なところで」「キャプテンの責任を果たせた」坂本選手はいつもにくらべて控えめなガッツポーズを塁上で見せた。
場内スクリーンに映し出された坂本選手の表情は安堵の思いで満ちていた。私は心が揺さぶられた。

4-4の同点からジャイアンツの投手は澤村拓一投手へ。昨年、球団トレーナーの針治療ミスで神経を麻痺し、一年通してマウンドに登ることができなかった。
悔しかった思いを東京ドームのマウンドで爆発させた。阪神打線の中軸を見事に三者凡退に討ちとり、流れをジャイアンツに引き寄せた。これぞ澤村、という圧巻の投球に私は拍手を送り続けた。

次の回でジャイアンツはついに1点をうばって逆転。5-4になって8回の表。「次は誰が投げるのだろう」「ひょっとしてあの人」誰もが上原浩治選手の登板を期待した。
場内にいるとブルペンで誰が投球練習しているかわからない。
「こんな大事なところでいきなりは使わないでしょう」私はそう思っていたが「ドロン」と太鼓の音。上原選手の入場行進で使われる曲がスタッフの操作ミスで先に流れた。
「え、上原?」と周囲の声。鎮まる場内。
そのあと場内スクリーンに大写しされた文字は「Welcome back!」。
場内はウワーッと歓声。その後、11番の背番号がアップに。鳥肌が立った。そのとき場内アナウンスが「ピッチャー上原浩治」を告げると東京ドームのボルテージはこの日最高潮に達した。

帰国して最初に投げさせる場面としては酷すぎるほどの緊迫した場面。だが上原はもっと厳しい修羅場をいくつもくぐりぬけてきた。
プレッシャーに強い男だ。案の定というべきか、圧巻の投球で阪神打線を3人で討ちとり、ベンチ前ではアマチュア選手なみのハイタッチで互いをたたえ合った。
「これで勝った」と私は確信した。振り回すために用意したオレンジタオルは涙をぬぐうために使われていた。

とどめは阪神・藤川投手から打った岡本選手の3ランホームラン。
入団4年目、ずっと期待外れに終わった未完の大器・岡本和真選手がようやく今年覚醒した。特大の今シーズン第一号は阪神ファンで埋まる左中間上段まで飛んでいった。
「やったね」「おめでとう」見知らぬ隣近所の人たちとハイタッチと握手の嵐。心なしかみんな、顔がくしゃくしゃにみえた。

3回の表で帰った人は本当に気の毒だが、辛い展開のあとから訪れる歓喜は二倍も三倍も魂をゆさぶられる。
ヒーローインタビューを見届け、ジャイアンツ応援歌「闘魂込めて」を歌いながら神保町のホテルまで歩いて帰った。

ありがとう3月! 見てろよ4月!