昭和22年から昭和24年の戦後ベビーブームの時代に生まれた人たちを「団塊の世代」という。
彼らが70歳を超え、現役経営者を引退する時期が始まっていることから日本経済新聞が昨秋「大廃業時代の到来!?」というセンセーショナルな見出しで報じた。
社長の平均引退年齢は70歳。私の周囲でもそれに近い会社がたくさんあるが、幸いすべて後継者が決まっているか、すでに承継済みである。
本当に困っているのは、社長が60代以上でありながら、未だに後継者が決まっていない会社。中には、腹をくくって「俺一代で廃業する」と宣言しているところもあるが、半数以上の会社は「未定」なのだそうだ。「未定」とは、状況次第では継承するが適任者が現れなければ「廃業」せざるを得ない、という意味である。
時間切れによる半強制的な「廃業」は避けたい気持ちもあるが、私は、それも仕方ない(信長流にいえば「是非もない」)と思っている。
「倒産は資本主義の最高の制度である。手形を不渡りにしたら倒産し、社員は失業する。そうならないように必死にがんばるし、もしそうなればまたやり直しができるシステムでもある」長谷川慶太郎氏の言葉である。
倒産・廃業しないように精一杯がんばるわけだが、イザそうなってしまったら、それを教訓にして再度がんばれば良いだけのことだ。
自然界も経済界も適者生存が原理。夢があって将来性があるところには若い人が集まり存続する。将来性が感じられないところは人が集まらず、社会から淘汰されていく。企業は適者生存で構わない。
会社が倒産することや廃業することが問題なのではない。
大いにそうなればよい。それを上回る数の会社が新たに生まれればよいのだ。つまり多産多死型の経営環境にシフトしていく必要がある。
そういう点で注目すべきは「起業率」ではないだろうか。
挑戦者が夢と同時にリスクも背負って会社を立ちあげ、生き残りをかけて懸命になることほど喜ばしいことはない。
ベンチャーと言えば20代の若者の専売特許だが、若者だけでなく高齢者のベンチャーも増え、日本全体の起業率が高まることが大切だ。
女性やシニアの起業率向上も期待されている。特にシニアは年金で余生を過ごせる時代ではなくなり、年金不足をビジネスで補う必要がある。
東京商工リサーチによれば、6年連続で前年を上回る会社設立があったという。つまり日本は良い方向に新陳代謝が進んでいるわけだが、まだまだ世界に比べると起業率が低いというのが問題だ。
★開廃業率の推移 → https://goo.gl/LLDg7t