ドライバー派遣のA 社では社長のお抱え運転手から幼稚園の送迎バス運転手、運送業のトラック運転手、タクシーの運転手など、いかなるドライバーでも派遣できる体制にあるそうだ。
「へえ、そんなビジネスがあるのですね」と驚いていたら結構利益率が高いらしい。
そういえば北関東のある温泉街で旅館の仲居さんを派遣している B社長とお会いしたことがある。そのとき、たしか新事業で板前の派遣も準備されているとうかがった。ホテルのフロント業務を派遣社員でまかなっているホテルもあるし、結婚式場の神父や牧師を派遣している会社も知っている。
気づいたらまわりは派遣だらけ。「派遣ホステス」に遭遇したこともある。10年ほど前のこと、友人と新橋のクラブで飲んでいたらボトルや VIP ルーム代などでお勘定が二人で12万円を超えたことがある。
そのときの担当ホステスが「ここで12万円使うくらいなら私のメインのお店の方がずっと値打ちよ」と小声でいう。
「どういうこと?」と聞くと彼女は派遣ホステスだった。彼女のメインは銀座6丁目のクラブだという。ちなみにそちらは当時現役だった横綱 A や、人気小説家 W、人気男優 W などが頻繁にやってくるらしい。
後日、行ってみたら本当に横綱 A が来ていた。そしてお勘定もカウンターだったせいか5万円もしなかった。
それはさておき、あらゆるところに使われる派遣。企業の社員だけでなく、銀行員も運転手も仲居も板前も神父も牧師もホステスも派遣の世の中。以前からプログラマーなどの技術者派遣や、コンサルタントの派遣など、派遣人材の高級化が進んできている。
先週木曜日、『黒革の手帳』(松本清張原作)が武井咲主演で第一話が放送された。
一見まじめそうな銀行員が夜の世界に目ざめ、やがてしたたかに男どもを翻弄し、夜の銀座の女帝にのしあがっていく元子。
原作を踏襲しつつも内容は現代風にアレンジされている。武井咲演じる東林銀行の行員・原口元子が主人公なのだが、今回は派遣行員という立場になっている。(原作では地味な銀行員)
また、母の借金(500万円)を返すために夜のアルバイトとして銀座のクラブで派遣ホステスを始めるわけだが、原作では見習いホステスになっている。
そのドラマを一緒にみていた息子が、「お父さん、なんでも派遣の世の中だね。そのうち、派遣の母、派遣の父、なんていう時代もくるかもしれない」と冗談を言う。
私も負けじと、「そうだな、そのうち、派遣社長の時代が来るかもしれない」と返した。
派遣社長は今の法律が認めないだろうが、AI 全盛時代を迎えるころには、派遣や AI の立場が相当強いものになっている可能性はある。