昨日のつづき。
「矢沢永吉という男の生き方が常にエピソードに包まれたものなのですが、特に世間をアッと言わせたのが35億円の詐欺事件に巻きこまれたときの矢沢が彼自身を Big に仕立て上げました」と彼。
その詐欺事件ってどういうものか聞いてみた。
・・・矢沢はオーストラリアのゴールドコーストの魅力に強く惹かれ、そこに音楽学校やスタジオを作れないか?と考えるようになった。このプロジェクトを任せたのが腹心の部下二人だった。しかし1998年に矢沢にとって寝耳に水のような事実が発覚した。腹心の二人は矢沢の会社でまったく別のビジネスに投資しており、大きな負債を抱えていたのだ。それまでの矢沢への報告はすべて虚偽だと判明。その後、部下よる詐欺・横領と断定された。矢沢が受けた被害総額は35億円。その全ての負債を矢沢自身が背負うことになった。これはオーストラリア犯罪史上二番目に大きい被害金額だったという。
・・・
「かいつまんで言うとこういうことです」と彼。
普通のメンタルなら耐えきれないはず。信頼していた部下に裏切られた矢沢は、さすがにこたえたらしい。打ちのめされ、毎日酒を飲んで過ごす日々。だけど、そこからの切り替えが見事だった。
「これが俺にあてがわれた台本なんだから、役者として演技を全うしなきゃ」と返済を始めた。
いままで避けていたテレビ出演や CM、映画出演などを積極的に引きうけ始めた。ライブにも力を入れ、会場に来てくれたファンのためにタオルやキーホルダーなどのグッズ販売にも力をいれた。こうした努力が実り「35億を6年で完済した」という伝説が出来た。実際にはつい最近まで10数年かけて返済したというのが真実らしい。いずれにしても、銀行マンが「返済の優等生」と評価した。
矢沢はライブやマスコミ取材でこのときのことをふり返っている。
「僕は皆さんにも言いたいね。リストラされたって、借金を背負ったってそれは役だと思え。苦しいけど死んだら終わりだから、本気でその役を生き切れ。つまり視点を変えれば、気持ちが切り変わるってことなんだ」
矢沢のライブで感じたことは「何て元気で歌がうまいんだ」ということ。それは驚きだった。最高のボーカリストであり、最高のロックシンガーの一人だろう。表面的な顔やスタイルだけでなく、彼の生き様そのものがロックンロールだからファンが元気をもらいに集まってくるのだろう。
私より年配の車いすに乗った男性が矢沢に拍手を送り続けている姿が印象的だった。