★テーマ別★

続・フィンテック(Fintech)

昨日のつづき。

「フィンテック」という新聞見出しをよく目にするが、あれは金融業界の一部の人たちの特殊な動きだ、などと思っていたら大きな間違いだ。すでに私たちの身近なところにフィンテック企業がいくつか存在し、誰もが無縁でいられないのが「フィンテック」なのだ。

その先がけ的存在が「PayPal(ペイパル)」。同社は1998 年に設立以来、お金のやりとりをもっと自由に、もっと安全にすることを目指し、一貫してデジタル決済のイノベーションに努めてきた米シリコンバレーのフィンテックカンパニーだ。
ほかにも昨日ご紹介した「アファーム」なども小口決済の融資を行うアメリカのフィンテック企業である。

現時点でフィンテック企業が活躍している分野は次の七つ。

1.決済(スマホなどでの買い物決済)
2.融資(個人と企業に。まだ金利は高めだが・・・)
3.経営・業務支援(クラウド会計、クラウド給与計算など)
4.資金調達(クラウドファンディング)
5.投資支援(投資支援ロボットアドバイザーなど)
6.個人財務管理(貯蓄や家計管理など)
7.暗号通貨(ビットコインなど)

つまり、銀行業務の大半がフィンテック企業でも行われつつある。

米JPモルガン・チェースのダイモンCEOが株主に送った手紙の一節が話題になった。

「シリコンバレーが、(金融業界に)やってくる」

というもの。銀行業務の本丸ともいえる「融資」と「決済」の二つの領域がフィンテック企業に浸食され始めたばかりか、優秀な人材と巨額のマネーがフィンテックのスタートアップ企業に注がれているからだ。もはや銀行が「お手並み拝見」とフィンテック企業を様子見している段階はとっくに過ぎた。

日本の金融業界も危機感を募らせている。同時に、金融再編に向けてフィンテックの波をチャンスとしてとらえようというポジティブな動きも出ている。東京国際金融センター構想の中枢である大手町エリアにフィンテックの聖地が誕生したのもその象徴だ。
「フィノラボ(FINO LAB)」という。「フィンテックでは海外勢に負けない」という日本金融界の心意気が伝わってくるようなこの聖地は、電通と三菱地所が協業でスタートした。

銀行も独自にフィンテックに参入したり、フィンテックベンチャーと手を組むなどの対応が始まっている。三菱UFJ、三井住友、みずほなどのグループ各社も日本のフィンテック企業とコラボすることを発表。
銀行とフィンテックがライバルになるのではなく、互いに力を補い合ってサービス力を高めようという動きがある。野村證券や電通といった日本企業もフィンテックに参入しているし、日本版フィンテックベンチャーも企業もたくさん登場している。

今年2016年は「フィンテック元年」でもあったが、来年以降、ますますフィンテックの波は大きくなりそうだ。こうした動きに私たちも目が離せない。いや、チャンスとしてこの分野への参入を検討する手もある。

※今日の記事は「社長最前線!2016年12月号」でも図表を交えて
ご紹介しています。よろしければどうぞ。
http://www.e-comon.co.jp/saizensen/