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おもてなし経営マーケティング

がんばれ社長の名古屋オフィスが入っている6階建てのビル。
1階、2階、6階をオーナーである S 印刷株式会社が使っている。ちょうど、このビルに引っ越してきた平成8年はまだ印刷業界が今ほど低迷しておらず、S 印刷は行政の刊行物や大手量販店のチラシをどんどん受注し、休日返上でフル稼働しておられた。

印刷業界は1991年(平成3年)に8.8兆円の市場規模があった。今後も業界の発展はつづき、15兆円産業まで成長すると言われていたものだが、翌年、バブル崩壊でマイナス成長に転じた。その後のワープロやパソコンの普及、プリンターの低価格化、ネットプリントによる価格破壊などの影響で市場規模は縮小をつづけ、ついに4.4兆円のマーケットサイズになってしまった。25年で半分になったわけだ。

私のビルのオーナー会社も今年、大リストラを断行された。数名の従業員全員を解雇し、夫婦二人で印刷ブローカーの仕事をつづけることにされたのだ。幸い、ビルの家賃収入があるので生活に困ることはないようだが、こうした印刷会社の例は全国でも珍しくない。

その一方で、ポスト印刷を旗印に掲げ、コンサルティング的な仕事にシフトしていく企業も多い。また、ネットを使ってより安く、より早い納期のネットプリントビジネスに活路を求めるところもある。

そんな中、2012年に丸和印刷株式会社から現在の株式会社マルワに社名変更した鳥原久資社長(58)は、あえて別の道を選んだ。
「地域に愛される印刷屋」で成長するという道を選択されたのだ。従業員数35名、業界で中堅規模の会社である。

マルワは若い社員が多くデザインも斬新だ。かつては若々しいアイデアを武器に人気映画そっくりのユニーク広告ポスターをつくって話題をさらい、世間から注目される会社になったことがある。だが、その結果は悲惨なものだったと鳥原社長。見積り依頼が殺到し、連日見積り作成に忙殺され、その結果、激しい価格競争に巻きこまれていくことに。労多く益少ない日々となり、優秀な社員がポツリ、ポツリと去っていってしまった。

「こんなことはやめよう。会社自体をもっと価値ある会社にしよう」と鳥原は ISO シリーズをすべて取得。CSR 活動にも全力を注いだ。
環境対応がもっとも進んだ印刷会社として業界の手本にならんとした。
さらには経済産業省が主催する「おもてなし企業選」の平成26年選出企業に選ばれるなど「おもてなし経営」にも力を注いできた。
その結果、「見学させてほしい」「勉強させてほしい」と頼まれる会社になった。

「そうだ、会社見学を積極的に受け入れよう」と昨年から定期的に会社見学会を開催することにした。昨年は175名が見学に訪れ、今年はすでに200名を超えている。中には大手自動車メーカーの役員も見学に来られるなど、望外な出会いもあるそうだ。

会社見学会での出会いが印刷の受注につながることも少なくない。
しかも価格競争にならないので利益率も改善する。
会社見学会を成功させる鍵は次の点をきちんと決めておくことだと鳥原社長。

1.何を知ってもらいたいか(何を伝えたいか)
2.何をお見せできるか
3.誰が説明するか(お見せする場所によって担当を変える)
4.配布物は何にするか
5.案内掲示板は分かりやすいか

お客さまを受け入れるにあたって、床や壁の塗りかえを社員総出で行った。会社全体がショールームになったので、社員も会社を今まで以上に大切に思ってくれるようになった。しかも会社を代表してお客さまに接するので、社員が一段と成長する。内勤社員も直接お客さまに接することで活性化する。

会社見学会ができる会社になる、という目標設定をされてはいかがだろうか。それにはまずマルワさんの会社見学会に参加申し込みし、鳥原社長のお話しを直接うかがうのが最善だろう。

★株式会社マルワ http://www.maruwanet.co.jp/