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人間関係と貢献について

ハーバード大学の「成人発達研究」における75年の研究でわかったことは、私たちの幸せの鍵をにぎるのは「良好な人間関係」に尽きる、ということだった。それを先週、三回にわたってお届けしたのであるが、上場企業の管理職の方からこんなメールを頂戴した。興味深いテーマなので今日はこの話題。

・・・はじめてのメールさしあげます。
基本的にはわたしも「人間関係が大切である」ことに異存ありません。
ただ私の部下(営業部門、仮に A君としておきます)は、誰とでも友だちになれ、一部のお客さんからはすこぶる可愛がられています。しかしながら、社内での A 君の評価は決して高くありません。存在そのものが軽いというか、本能的に敵を作るまいと汲々としているのが透けて見えます。今はまだ30歳前後と若いのでそういう軽めのキャラでも通用するのでしょうが、A 君の将来を考えると「人間関係に尽きる」というアドバイスは送りがたい気分です。もし人間関係力をとるか、
責任遂行力を取るかといえば私なら責任遂行力がある部下を選びます。
整理できていませんが、この気持ちを武沢先生はどう受けとめられますか?メルマガ紙上でも構いませんのでお時間のあるときご回答くださればありがたいです。
・・・

上司である管理職にこういう疑念を起こさせる時点で A 君の人間関係力は破綻しているように感じる。生産的な人間関係とは、互いに信頼しあい、疑いの気持ちを起こさせない関係をいう。反対に非生産的な人間関係は、優しさの名を借りた傷の舐めあいにすぎない。

そのあたりは、『プロフェッショナルの条件』にあるドラッカーの言葉が一番しっくりくるはずだ。

「人間関係に優れた才能をもつからといって、よい人間関係がもてるわけではない。自らの仕事や人との関係において、貢献に焦点を合わせることにより、初めてよい人間関係がもてるのである。こうして、人間関係は生産的なものとなる。まさに生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である」(ドラッカー)

『7つの習慣』のコヴィー博士は、人の成長は「依存」→「自立」
→「相互依存」の段階を踏むと教えた。所属する組織に貢献するためには、まず「自立」せねばならない。自分の責任を果たすことである。
次いで、「相互依存」せねばならない。それは「自立」した者同士が互いに手を組んで、高い次元のコラボ関係を実現することである。

そうした関係が組織におけるプロフェッショナルの人間関係である
かつては、プロフェッショナルとは一部の選ばれた人だけを差してそう呼んだ。だがいまでは、プロフェッショナルな成果が期待されない職業や職種は皆無である。

したがって結論:人生は人間関係が一番。
ただし、仕事においては貢献に焦点をあわせることによって初めて良い関係が生まれる。プライベートにおいても質が変わることはあれど、貢献に焦点をあてた人間関係が大切であることに変わりはない。