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例外はガンジス川

10年前にガンジス川へ行った。生と死が渾然一体となった聖なる場所で川にもぐった。
川上で焼かれた死体が流れてくることもそんな場所で沐浴するなんて、僕には出来ません、と言っていた人も喜々として飛びこんだ。

ふと脇をみると、洗濯している人がいた。ガンジスで沐浴しながらその人は言った。「よくこんな川で洗い物ができますね」

死体を焼き流す川、人々が沐浴する川、洗濯をする川・・・。
まさしくそこはひとつの小宇宙。カオスの川、ガンジス。

だがカオスはガンジスだけだ。普通の川は綺麗か、汚いかで扱いははっきり分かれる。水に上水・中水・下水があるように、川にも飲めるくらいに清い川、野菜を洗えるほどに清い川と、生活排水や工場排水が流れる川といった具合に分かれる。ひどいのになるとヘドロで悪臭がただよう川もある。

人間もひとつの川である、と中国の故事。

孔子は言った。
「あの歌声をききなさい。(古くから唄われてきた民謡の一節をさしている)
・・・水が澄んでいれば赤子を洗い、これが濁れば足を洗う・・・

みずからこれを招いたのである」 【出典:孟子】

あなた自身が清い川であれば、あなたの元に赤子を洗いにくる。
あなたがもし汚れた川であれば、あなたのところに足を洗いにくる。

みずからがこれを招いているだけである。

例外はガンジスだけだ。