未分類

アメリカ共産党と赤狩り

政治が大好きな社長がいる。新聞を毎日1時間以上かけて丹念に読むある社長は、政治や外交問題、国際紛争などに精通しているという。

名刺交換もそこそこに「今回の小池都知事の選挙戦略をどのように評価されたか?」と聞かれた。「さあ、普段は名古屋ですから」と答えると、「じゃあ、米国の大統領がどちらになれば日本の国益は守られるか?」と問う。「さあ、門外漢なので」と言葉を濁したら、「武沢さん、あなたはコンサルタントなのでしょ?政治情勢を押さえておくことは大切なことじゃないですか」と突っ込まれた。ほかっておいてほしい。「必要を感じたときにいつでも調べられるし、政治は私にとって優先順位は高くないです」と答えた。「いいんですかね、それで」と言うので、「いいんです」と即答した。

反対に、政治にまったく疎い社長もいる。
ある人がこんなことを言っていた。「日本は政党が多すぎると思うのですよ。私が知っているだけで10政党以上ある。日本もアメリカやイギリスみたいに二大政党制にすればいいのに・・・」これもまた、認識不足というべきだろう。たしかにアメリカもイギリスも二大政党ではあるが、二つの政党のみではない。

たとえばアメリカの場合、10万人以上の党員を有する政党として、「アメリカ緑の党」と「リバタリアン党」がある。10万人未満7万5千人以上の党員をもつ党として立憲党があるし、その他の群小政党として、公正党、自然法党、アメリカ改革党、アメリカ共産党など数十かそれ以上の党および会派がある。

そんな話をしたら、「アメリカに共産党?」と奇声をあげられた。
中国や日本に共産党があるのは知っていたが、アメリカに共産党があるなんて信じられないという顔つきだった。
そもそも民主主義の国、自由主義の国には基本的に結社の自由が認められている。当然、そうした国の多くでは共産党またはそれに近い思想の党があってもおかしくない。

ただ、東西の思想的対立がピリピリしていた時代には共産党は禁止、もしくはそれに近い迫害を受けていたことがある。
特に1950年代、終戦直後のアメリカではそれ(赤狩り)が厳しく、共産主義、社会主義、その支援者は徹底的に弾圧された。思想的な暗黒時代といえよう。

ハリウッドも徹底して弾圧に回った方だから、その当時のことを映画にするのは大変珍しい。今上映中の『トランボ』はまさしく赤狩りで弾圧されたダルトン・トランボが主人公の映画。「ローマの休日」
「スコルピオン」「ダラスの熱い日」「パピヨン」など数々の脚本を残しながらも存命中の大半は赤狩りの対象としてハリウッドで干された男。当然仕事がなくなる。家族を守るためには偽名をつかってまで安いギャラで三文映画の脚本を書いた。そのあたりの心の強靱さと、仕事に対する狂人ぶりが実によく描かれている映画だ。

周囲から弾圧されても負けるもんか、という気持ちになれるだろう。
★「トランボ」 http://trumbo-movie.jp/