未分類

残業問題を考える

※登場する個人名・会社名は架空のものです。

朝礼や会議のたびに「我々 ワド広告社員一同は、ワドマン精神にのっとり、正々堂々と仕事をし、・・・」から始まる経営理念の唱和をやめた。
「本気講座」を受講された東京の和戸社長は、ご自身が経営する広告代理店「ワド広告有限会社」を株式会社に改組。それと同時に、「ワド広告 経営近代化5ヵ年計画」を発表。毎朝の朝礼も5ヵ年ビジョンの唱和にきりかえた。

ワド広告の5ヵ年ビジョンは誰がきいても分かりやすい。

「定時に帰って給料2倍。年に一度は長期休暇!」

というものだ。私でも一発でおぼえられる。

この中期ビジョンは社員の心を大いに刺激した。なぜなら、いままで経営理念を唱和するたびに社員手帳をひらいていたパートさんが、たった一回で憶えてしまったそうだ。

和戸社長は、具体的な5ヵ年目標は次のように掲げておられる。

・社員の年間労働時間を2,000時間にする(今 3,100時間)
・生産性(年間粗利益÷社員数)を2,000万円にする(今800万円)
・社員の残業時間をゼロにする
・社員の平均賃金を5年で倍増させる

実に明快で分かりやすい目標だと思う。

社長の弟、和井田専務が「生産性委員会」を設立した。社員が目標達成しながら時短できる方法を全員で議論し、毎月のマイルストーン目標をつくって実績チェックしていくという。

私も同社の経営計画発表会に招かれ激励講演した。これからも年に何度かはワドにおじゃまして時短問題の進捗を確認することになっている。

その帰路、神奈川県にある Y 社に立ちよった。
販促グッズの企画販売をしておられる。Y 社長とは最近、ある会合で出会ったばかりでこれが二度目の面会である。
応接室で Y 社長は、今年入社した新入社員二人についてこんな話をされた。

「武沢先生、今年うちに入った社員のA 君はよくやってくれてますよ。進んで仕事をつくって誰よりも早く会社に来るし、誰よりも遅く帰る。サービス残業をいとわないなんて今どきの子にはめずらしいでしょ」

・・・それって誇るべきことなのかな・・・
内心でそう思いながらも黙って聞く私。今度はもうひとりの B 君の批判が始まった。

「それにひきかえ B 君には失望です。なんでもフットサルのキャプテンらしく、定時がくるとサッサと帰ってフットサルをやりにいく。
この前なんか10分前に帰っていきましたよ。このあと彼も呼びますから、一度、先生からガツーンと灸をすえてやってくれませんか」

社員を会社に長く拘束することが得であるかのように思っている社長がいるが、Y 社長もそのクチだろうか。社員に期待していることは成果ではなく、長時間労働であるかのようだ。

ワド広告の和戸社長と対極にある考えだ。
「社長、B 君にお灸をすえる前に社長のお考えの古さにお灸をすえたい気分ですよ」と私は申しあげた。

一瞬きょとんとした表情をされたが、すぐに笑顔をつくってみせた Y社長。「私の問題ですか。いいですよ、おうかがいします」

おもむろにこんなことを申しあげた。

<明日につづく>