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自分のスタイルをもつ、とはどういうことか

なるべく、異端の友人、異端の書物というものを大切にしておきたい。異端とは、自分にとっての異端であって、世間から異端児扱いされている人だけを意味するのでもない。

私がときどき会う友人に K 氏という同年代の男性がいる。ふだんはハワイを中心に不動産開発をしている。以前はテキサスで石油探掘の仕事をしていたこともある。年に1~2回、日本に来る。私もときどき氏に会って酒を飲む。

かなり変わっている。「人生は仕事をするためだけにある」が口ぐせで、仕事以外のことには興味がない。氏の楽しみといえば、ロンドン紳士風のオシャレをすることと、グルメと恋人。あとのことはすべて「些事」(さじ)だという。

だから氏によれば「人生はショクなり」となる。「職」と「食」と「色」と「飾」の四つなのだそうだ。

西洋思想ウケウリの家族尊重主義は性に合わない。ワークライフバランスなどという小ぎれいな流行思想も大嫌い。

「家庭を大事にするのは目的でもなんでもない。良い仕事をするために必要な安息の場が家庭であるから、平穏であればそれで充分だ。必要以上に家庭を大切にするのは、仕事で自己表現できない男の逃げ道にしたいからだ」と K 氏。

氏によると「健康」も「友人」も「娯楽」も「教養」も「人格」もすべて「家庭」と同じ範ちゅうの性質らしい。

「健康な身体になることが目的ではなく、仕事で何かを為すために必要なのが健康であって、健康の定義は国や第三者が決めるものではない」となる。

「そんなことを言ってるから三回も離婚するんだ」と私が反論を試みると氏はいつもこう言う。

「三回もめげずに結婚してみた俺の努力を評価してくれ。それにお前は他人の自己紹介に反論するつもりか?」と。そしてこう続く。「俺の信条に関してお前と議論するつもりはない。分かってもらうつもりもない。これは俺の自己紹介だと思ってくれ」

「日本の今が分かるから」と「がんばれ!社長」は10年ほど前から読んでくれている。私も氏と毎年会っているということは、偏ってはいるものの、何か惹かれる考えが氏にあるからだろう。

それは、「世間常識や風潮を鵜呑みせず、自分の頭で考えるくせを持っている」ということだろう。

「自分のスタイルをもつ」とは、他でもない。自分の考えを述べるだけでなく、それを貫いて実行していることを言う。