●私は政治にあまり関心がない。「これではいかんな」と思い、テレビのニュース番組や新聞チェックをするのだが、特定の問題に対して深入りして勉強しようとまでは思わない。自分の仕事で精一杯だから、といえば格好がつくが、正直言って、政治は政治家に任せておけばよいので、今どんな政治が行われているのだろうと確認する程度で充分だと思っている。
●ときどき政治にすごく熱い人から「政府の対中外交は腰抜けじゃありませんか？」と聞かれても私は何もいえない。なので、もったいぶって、「その通り。良く言えば政府は慎重だし、悪く言えば腰抜けだ。
黒船の対応にオタオタした江戸幕府そっくりじゃないか」ぐらいの気勢をあげてお茶を濁す。
●日本政府としてどうあるべきか、ということについては偏った私見しかもっていない。政府や政策に対して無責任な批判はできても、どうあるべきかというオリジナルの提言や建白ができない。それができるような知識や情報がないからである。であれば、誰の発言が最も自分に近そうか、という相手を探すしかない。それだけではいけないと思うが、代議士制度というものの本質はそれで良い、のである。
●昨日号で私は「メガソーラー事業」の有望性を書いた。ビジネスとして大いに妙味があると思ったからだが、たくさんの資料請求や問合せが届いた。この事業に対する関心の高さがうかがえた次第である。
●そんな中、数は少ないが批判のメールも届いた。民主党の政策批判も含めての事業批判、それを推奨する私も一緒に攻撃を受けたかたちだ。
１．先生は民主党と大企業の走狗ですか？ Y さん（茨城県、男性）
武沢先生の講演を数年前に都内でお聞きして以来のメルマガ読者です。いつも大いに刺激と学びを得ているのですが、今回の記事「メガソーラー事業」について
だけは黙っておられずメールいたしました。
国民にとって電気とは、もっとも重要な生活インフラであるにも関わらず一部の企業や個人だけが法外な利益を得られるようなメガソーラー事業計画なるものに
私は反対の立場です。15円の電気代を42円で買い取って、その負担は国民の電気利用料にまわされるのが見えています。国民を犠牲にして一部の業者が潤うよ
うな政策のどこが良いのでしょうか？学識経験者や財界の経営者にも反対する人が少なくありません。武沢先生はどの程度の見識でこの法案を支持されるのか、
バックグラウンドをお聞かせ願えませんか。もしそれがないなら、ハッキリ言わせてもらって民主党の走狗、一部大企業の走狗といわれてもやむを得ないと思う
のですがいかがですか。
２．ほめられた事業じゃない Y さん（関西、男性）
Y と申します。いつもメルマガありがとうございます。
本日のソーラー事業の件ですが、その儲けの源泉は我々一般消費者になりますよね。あまり、ほめられた事業じゃないと思います。
以上
３．絶対に頑張ってほしくない Z さん（九州、男性）
武沢先生
はじめまして、Z と申します。長年メルマガを愛読させていただいているものです。九州で小さな会社を経営させていただいております。日本をよりよい国にす
るために、自分なりにがんばっているつもりでおります。
時代の大きな流れの中では、時に大きな災害や事故・事件がおこり、その混乱の中から、次の時代を担うような新しいものが生まれていくこともある。いや、そ
うしていかなければならないと、震災以降、強く感じております。
危機の中には必ずチャンスが生じます。しかしそこでは必ず、とても大事なことが問われるように思います。
そして今、我々は誠実に、且つ慎重に答えなくてはならないと思います。「それは本当に正しいことなのか」という問いに。
先生のメルマガにあるような、実に 3倍近くの値段の電気を大量に作ったとして、その金額の増加分は最終的に誰が負担するのでしょう。
壊滅的な財政状況のなかで、優遇税制によって減少する税収はいったい誰が負担するのですか。
「国策にも則って大いに結構な話」と書いておられますが、国策に則ってさえいれば、それは本当に正しいことなのでしょうか。
国内の太陽光パネル最大手である京セラの創業者ですら、太陽光発電は「メジャーなエネルギーにはなり得ないと思っている」と明言した上で、
「原発は、必要悪として、どうしてこれをコントロールして使っていくかに力を入れなければならないのではないかと思っている」と語っています。
http://www.j-cast.com/2012/10/23151075.html?p=all
震災以降、ほんとうの事が言えない雰囲気が日本を覆っています。
その間隙を縫って良からぬものが蠢き始めている。そんな感覚を確かに私も感じます。
私は科学者でも経済学者でもないので、専門的なことはわかりません。本音を言えば、何が正しいのかも本当のところはわかりません。
しかし、これだけははっきり言えます。
国策に則っているから正しい、という一言で自身の発言に対する責任を棚上げした上で、今後20年にも渡って日本国民が負担するであろう経済的な負荷につい
て顧みることなしに、CO2削減、原発廃止などという大衆迎合の価値観に訴えることで、金儲けを正当化する。
そんな社長に私は、絶対に頑張って欲しくありませんし、少なくとも、今後は「経営理念」などという言葉は軽々しく使わないでいただきたいと思います。
お金儲けも大切なことではあります。だからこそ同時に、「正しさ」ということについて真摯に考えてみるべきではないでしょうか。
長文、乱文失礼いたしました。
もし私の考えが間違っているようであれば、ご指摘いただけると幸いです。
●では私の意見を申し上げたい。
この三通のメールによって政策や事業に反対される方がいることを理解できた点では感謝している。
ただし、どのご意見も間違っているとは思わないが、かなり偏っていると思う。もちろん私も偏っている。偏っているから人間なのであってすべてに中立などということはあり得ない。ましてや今回のテーマは国のエネルギー政策に関することでもある。
それは、政策問題だけでなく政治問題でもあり、学術問題や技術論にも踏みこんでいるだろう。国を分ける論議になるのは当然のことで、その議論の結果、「再生可能エネルギー特別措置法」が国会で承認され、今年の 7月から施工され、オンラインでも次のように広報されているわけだ。
→ http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201110/4.html
私は企業経営者に対してそれに関連する事業をメルマガでご紹介したわけで、いかなる批判やそしりの対象にもならないはずである。
むしろ、自分の価値観と反する相手方のことを「○○の走狗」とか、「そんな社長に絶対に頑張ってほしくない」、「そんな人に経営理念などと軽々しく使わないでいただきたい」とまで言える資格はどなたにあるのかと逆に問いたい。
ましてや、○○さんという大物がどうおっしゃっている、ということは、ご自身の発言を軽くすることはあっても重しにはならない。
何事も人のせいにするのでなく、ご自分の座標軸をしっかりもって発言と行動をされることをすべての経営者におすすめしたい。
国策に則ろうとしてがんばる人がいれば、国策に乗らない人がいる。
国策を批判する人もいれば、すべてに無関心な人もいる。
その誰かが、ほかの誰かを批判するのは勝手だが、度を超すと偏屈になる。あらゆる価値観を理解できる分別が経営者に必要なのではあるまいか。
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【編集後記】
◆今夜のセミナーは長野の上田で行われます。特急しなの号は岐阜から長野の山間を走りますが、窓外の景色は「錦秋」ということばにピッタリの紅葉です。特に「寝覚めの床」周辺の赤と黄色は実に鮮やかでした。
