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社員を鍛える工夫

報・連・相が大切ですよ、職場ではチームプレイを心がけましょう、などとテキストを解説して教えても社員には伝わらない可能性がある。思いきった体験学習させねばならない。

山口県のある会社では、新入社員に社会人の心構えを教えるため独自の研修メニューを考案している。瀬戸内の小さな島に渡り、初日の夜に飯ごう炊さんを行う。そのあとチームごとに後片づけをする。決めた時刻までに終えねばならないが、研修長の指示で追加作業が加わるので結局どのチームも時間内に終わることができない。

結局5分から10分遅れで終了し、「終わりました」と報告して新人たちは安堵している。そこに研修長の大喝が飛ぶ。「これが社会におけるビジネスなんだ」と。ビジネスにおいても予定外の注文やトラブルなどで計画通りにならないことがしばしば起こる。そのときに気持ちばかりが焦って混乱したまま仕事をするとトラブルが拡大する。まず状況を整理し、同僚や上司に報告して計画を最新にする必要がある。そんなことを研修長が教えると新人は二度と忘れない。こうした体験学習が効果的なのだ。

私も20代のころ、教育ビデオを撮影するため売場でロケをした。売場を使うことに対して社長の許可をとりに行ったところ「15時から17時までなら使って良い」と言われた。ところが収録が長びき、18時になってしまった。店内に客は乏しく、支障ないと判断してのことだった。本部にもどると、「あなたに与えた収録許可は17時までだ。どういう権限があってそれを延長したのだ」と叱られた。まるで昨日のことのように憶えている。

風変わりな教育といえば、映画を使った社員教育を行っているところを何社か知っている。

愛知県の不動産会社 G 社では『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』と『アポロ13』、『ザ・エージェント』『マーガレット・サッチャー鉄の女の涙』『モーターサイクル・ダイアリーズ』など、危機におけるリーダーのあり方を学べる好映画を社内に数十本揃えている。それを見て議論したり、感想文を書くというのが社員教育なのだ。

また、千葉県のチェーン店 Z 社では、東映系の任侠映画を放映し、要所要所で止めて社長が解説する映画教育を行っている。人としての筋の通し方、出処進退、愛する人を守るといったことを学ぶようだ。

人の育て方は各社それぞれの工夫がある。