●テレビのお正月番組に芸能人を格付けするものがある。
1本何十万円する高級ワインと、スーパーで手に入る5千円程度のワインとを飲み比べ、どちらが高級かを当てさせる。これがなかなか当たらない。
●他にも、高級肉とスーパーの普通の肉、高級な楽器と市販の楽器の音色比べなどもする。わずかな分量しか試食(試飲、試聴)させないのがミソのようだ。
●舌が充分肥えているはずのベテラン俳優や人気タレントが外してしまい、二流、三流芸人の扱いを受ける。番組的にはそこが面白いところなのだが、なぜ高級品と普及品とを見誤るのだろうか。
●「映画は予告編が一番おもしろい」とささやかれるが、同様に、料理や飲み物は試食が一番美味しく感じられる傾向にあるようだ。つまり、デパ地下での試食の印象を100%信用するのは危険かもしれない、ということでもある。
●試飲会の反応を製品開発に活かしたために大失敗した会社がコカコーラだろう。
1970年代、ソフトドリンクの消費者のうち、ペプシしか飲まないと答えた人は4%しかいなかったのに対し、コカコーラしか飲まないと回答した人は18%もいた。圧倒的にライバルに差をつけていたコカコーラ。
●だが消費者の嗜好は変化し、ジリジリと差がつまっていた。
1980年代初頭の調査では、ペプシ派が 4%から 11%に急増、コカコーラ派は18%から12%に低下していた。
11%対12%の拮抗、当時「トップシェアはすでにペプシだ」と報ずるメディアまであった。
●「今がチャンス!」と、ペプシは挑発的とも思えるキャンペーンを展開した。それが世にいう「ペプシ・チャレンジ」である。
その一貫として、コカコーラしか飲まないという人たちを集め、試飲テストを行った。二つのグラスに入ったドリンクを飲み比べ、どちらが美味いか選んでもらったのだ。大々的な調査だったが、その結果はペプシが大差で勝利した。
●その様子がテレビコマーシャルされた。当然、コカコーラ社はあわて、異議を唱えた。そんなはずはない、いかにもあれは恣意的な調査方法である、というわけだ。
●ペプシのキャンペーンを打ち消すために、コカコーラ社でも独自に調査をした。
コカコーラの経営陣は自社の味に自信があったのだ。だが飲み比べの試飲会の結果は残酷なものだった。なんと、57対43で、ペプシに軍配があがったのだ。完敗! どうするコーク?
<来週につづく>