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人生を懸けて決める

●自動車用品販売の社長が書いたある本の一節に、「オイル交換に人生を懸けろ」という社員向けメッセージがあった。

たかがオイル交換に人生なんか懸けられるか、と社員の目。
「じゃあ、お前は何に人生を懸けているんだ」と切り返すと、何も返答できない社員たち。
目の前のことや、毎日やっていることに命を懸けられないで何に命を懸けるというのか、というわけだ。
私はそれを読んで「たしかにそうだ!」と合点し、「メルマガ発行に命を懸ける」とメルマガで宣言したのが2003年のことだった。

●社長は会社経営に人生を懸けている。そのためには、人生を懸けたくなるようなことを本業にしなければならないし、人生を懸けたくなるような仲間と一緒に仕事をしたいし、人生を懸けたくなるような目標や目的を掲げたいものである。

●そのための一助がこのメルマガであり、「本気講座」であると願ってやっている。

つい先日の「本気講座」では、経営理念を成文化する作業が行われた。
だが、一人の社長の手が止まったまま動かない。年商15億円の会社の社長である。
私は席に近づき、「どうですか?」と様子を尋ねると、「どうにも決めかねます。どれもこれも大事ですから」とおっしゃる。

「ほぉ、それは悩ましい。どれもこれも大事という”どれもこれも” は、どこに書いてあるのですか?」と聞くと、その社長は水泳の北島選手のようにグーを作って左胸を叩いた。
「ここにあります」と言う。社長の胸の内にあるということらしい。

●「それじゃダメでしょ」と思いつつも、つとめて冷静にこう申し上げた。

・・・
社長、そこにあるものを全部吐き出しましょう。「どれもこれも大事」という「どれもこれも」を一つ残らず紙に書き出すのです。箇条書きで結構ですから。例えば、「信用第一」とか「安全第一」とか、「顧客が一番で社員が二番」とか、「挑戦と冒険を尊重する」とか、「業界を変え、世間を驚かす」とか。そのなかで、理念のなかに必ず盛り込みたいものだけに○を付けてください。必ずしも理念ではなく、方針や計画のほうで表現すれば良いことは○を付けなくても構いません。できれば、○の数は欲張らずにいきましょう。せいぜい三つ以内になるように挑戦してみましょう。
・・・

●10分後、ふたたび様子を見にうかがうと、その社長は三つぐらいしか書いていない。そして、○はどれにも付いていない。
「どんな具合ですか?」と私。
すると、「いやぁ、文字にする作業って何だか悩んじゃいますね」と笑っておられる。

●いまだに作業が進まず笑っているなんて冗談じゃないと思い、冒頭の言葉を引き合いにだした。

・・・
社員もお客もあなた自身も待ち望んでいるのが「理念」です。理念を産みおとすことで、あなたのビジネスは個人商店から会社経営へと新たなスイッチが入るのです。
経営理念を決めることにあなたの人生を懸けて下さい。それは紙とペンを使って考えることです。腕組みしながらうなっていることは考えているとは言わず、悩んでいるといいます。今必要なのは考えること、そして決めることです。
・・・

●気色ばんだその社長は、こう言った。

「私だって人生を懸けて考えてますよ。一晩中ふとんの中で考えることもある。それでも決まらないからここに来た訳です」やや涙目だ。

●そこで私は二つのことを申し上げた。

1.決断のルールを決め、期間限定で悩む
いつまでに決めるかというデッドライン(最終期限)を決めましょう。その期限のなかで出た一番良い案をひとつ選ぶということを前もって決めておきましょ
う。国の行く末を決める法案ですら会期の中で決めるというルールがあるから決まるわけです。ルールがなかったら決まるものも決まりません。

2.決断慣れする
簡単なことならすぐに決められます。経営理念を決めることは簡単なことではありませんが、少しでも負担が軽くなるように、期間限定の経営理念を作ること
から始めましょう。
今期経営理念か、今月経営理念を作りましょう。時期が来たら変えますよ、という前提なら決めやすいはずです。そのうち、変えたくないものが出てきますか
ら、それがホンモノの理念である可能性が高いです。

●その社長は二週間後の講座までに決めてくる。人生を懸けて決断してこられるはずだ。