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続・A 常務の再出発

還暦を目前にしてふたたび就職活動するのか、それともこれを良いチャンスととらえて独立開業するか。
できるものなら製造業専門のコンサルタントとして独立したいと思っている旧友の A。ゼロからのスタートといいたいが、彼の場合晩婚で、長男が来年高校受験。翌年には長女も受験が控えている。物入りが続くなか、毎月の返済も背負い込んでマイナスからのスタートとなった。

そんな中での独立開業なのだから、プレッシャーがかかるのは当然のことだろう。

「かみさんの情緒が不安定だ」と A。

これからどうするの?大丈夫なの?うまくいかなかった時にはどうなるの?と連日聞いてくる。

そのたびに A は、「大丈夫だ」「何とかする」「心配はいらない」と言うのだが、信用してくれない。こんな時こそ家族が一致団結しておやじの仕事がうまくいくようサポートしてほしい。だが、奥さんは A に圧力を与えるだけだという。

「武沢だったらどうする?」

「私ならこうする。いや、実際に40歳でコンサルタントを始めたとき、かみさんにこんな話をした。まずはキッパリと見通しを語るべきだ」

来月から僕は経営コンサルタントとして開業する。資格もノウハウもコネも何もないけど、仕事をくれそうな社長が2~3人いる。そういう会社をとことん応援しながら紹介ももらって客先を増やしていく。
予定では半年以内に月収50万円になるので、あなたが働きに出てくれる必要はない。

不安を少しでも消し去るためには、収入の見通しとその根拠、および家族や奥さんに与える影響がどの程度なのかを語る。その時の口調がキッパリしていることも重要だ。

「なるほど。それでもうちの妻は信じてくれない可能性がある。もしその通りにならなかったからどうするの?としつこく聞いてくるんだ」

最後は覚悟のほどを披露せねば。

何があってもあなたと子供の生活を守る。それだけは絶対約束する。
ぼくの最大の財産は家族とこの身体。毎月25日×16時間=400時間、働きつづける体力が僕にはある。
万が一コンサルタントとしての仕事がなくても、道路工事のアルバイトとガードマンのアルバイト、コンビニの夜間勤務など全時間をお金にして家族を守る覚悟でやる。400 時間を時間給の仕事におきかえただけでも充分な収入になる。実際の収入目標はもっと大きいものだし、家族には不自由な思いをさせない。大いに安心して今までのように暮らして欲しい。僕の事務所が大きくなって事務員さんを雇えるようになるまでは、ワープロ打ちや事務の仕事でサポートしてもらえると大変助かる。

不安を 100%払拭することなどできないが、こうした覚悟のほどをみせられたとき不安の半分以上は消し飛ぶものである。

半年後の再会を約束した。
「今度は俺がご馳走する」と A。