●タレントならいざ知らず、ビジネス界の人がマスコミの寵児になると、あとから反動がくる。運を使い果たさなければよいが。
昨年、ある有名な女性論客が毎週のように新聞や雑誌に登場していた。
「あの○○さんと一席設けることができますがいかがですか?」と言われたことがあるが、辞退した。
●私はどちらかというとチヤホヤされている人より、まだ運が向いていない人や友達が少なそうな人が好きだ。
子供のときからそうで、特殊学級(今は特別支援学級)の A君とは大の仲良しで、いつも登下校を一緒にしていた。
●周囲から(まだ)評価されていない人と仲良くしたがる性癖は今も続いているが、「欽ちゃん」こと萩本欽一さんもそれに近いようだ。
氏の近著、『ダメなときほど運はたまる』(廣済堂新書)は、運に関する欽ちゃん独自の視点が描かれていておもしろい。
本の帯にあるこんな言葉が目に飛び込んできた。( )内は武沢注釈。
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運を良くするには、たったこれだけでいい
・失敗は運の定期預金
・はじめに損をすれば運は向いてくる
・向いていない場所(仕事、職場)に運がある
・「がっつく」と運は消えていく
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●「運に運を重ねると不運になる」と欽ちゃん。
エアコンのコマーシャルの仕事で年末にハワイに行った。その時、せっかくなので休みをもらってお正月もハワイで過ごそうと考える。コント55号の相方・坂上二郎さん(以下、二郎さん)とバカンスを楽しんでいる様子も番組でも使おうといわれ、オフのショットも収録する。
こうして、一石二鳥ならぬ一石三鳥のことをやると効率的に思える。
だが、その結果は視聴率の激減となってあらわれる。ファンが離れるのだ。
●欽ちゃんいわく「運に運を重ねた結果」だという。
こうした出来事が何度もあったので、仕事のロケが終わるとさっさと逃げるように帰ってくるようになったとか。これも運の貯金なのだろう。
●私も「仕事に行ったついでに延泊して温泉宿に泊まる」と考えることがある。一度の移動でふたつの用事が済むわけだから、一石二鳥だと思っていたが、ひょっとしたら間違ったことかも知れない。
何より仕事先の人たちに失礼だろう。これからは仕事が済むと逃げるように帰ってくることにしよう。
●「あなたに運を運んできてくれるのは怖い人やライバル」と欽ちゃん。
駆け出しのころは温泉旅館のステージでも芸をみせていた。そのころの芸人としての最大のライバルが二郎さんだった。
「あのやろう、俺より若いくせに生意気だ」と二郎さんに思われていたようだ。あの二郎さんが欽ちゃんを露骨につぶしにかかったという。
●そんなある日、二郎さんが電話をくれた。マージャンの誘いだったが、それに応じて二郎さんの家に行ったのが「コント55号」の誕生につながる。その日、二郎さんの家で一作目のコントネタまで作ってしまった。
「最大のライバルが僕に運をもってきてくれた」と欽ちゃん。ライバルを避けてばかりいては実にもったいないわけだ。
●怖い人も運をくれる。
先輩芸人や会社の重役、作家や演出家など怖い人はたくさんいる。だが、逃げずに飛び込んでいくことで、「怖い人が運をくれる」経験を何度もしてきたという。
●ある時、演出家の先生に「お前はこの世界に向いていない」と次のように言われた。
「いろんなコメディアンを見てきたけど、早い奴なら一週間もするとコメディアンらしい雰囲気をみせる。遅い奴でも一ヶ月。珍しいよ、お前は。三ヶ月経ってもコメディアンの気配も漂ってこないもんな」
●それに対してムッとすることもなく、素直に「はい、自分でもそう思います」と認めた。そして、座長に辞意を伝えにいった。
すると座長が先生にかけあってくれた。「どうか、あいつを辞めさせないでくれ」と。
すると先生は欽ちゃんのところに来て、「あいつを辞めさせるな」と座長に言わせることが芸の世界には大事なことだ。きっとお前は一人前になるから生涯やめるんじゃないぞ!」と言ってくれた。それが、欽ちゃんの開運につながる。
●エピソード満載で欽ちゃんの開運談義が聞ける。
ドーンと行くためにはコツコツ運を貯めねば。
★『ダメなときほど運はたまる』(廣済堂新書)
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