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プライベート・ライティングの奇跡

●話しながら考えるタイプの人もいるが、私は断然、書きながら考えるタイプである。書いているうちに書き始めとは似ても似つかぬものになり、書きおえて唖然とすることもたびたびである。

●通常、一本のメルマガに2~3時間かける。最初は、秋だから旬の話題として「柿」について書こうと思ったとしよう。ちょうど実家から富有柿を送ってきたので、富有柿が岐阜で開発された柿であり、どのようなご苦労があってこの柿が完成したのかについて書こうとした。

開発の苦労がむくわれたとき、苦労は一瞬にして喜びに変わるという主題にしよう。

●ふと、「柿食えば・・・」の俳句を詠んだ子規は、何の柿を食べたのだろうと疑問に思い、調べてみた。
すると、子規に関する別の興味深いエピソードがみつかり、それに夏目漱石がからんでいることがわかった。意外な漱石の一面をみる思いがするエピソードだ。

●そこで漱石の『吾輩は猫である』を書棚から取り出し、それに関連する箇所をみつけて読みかえすこと15分。

ところで、漱石家の猫はどこで買ってきたのだろう、もらったのか?と疑問に思って調べるうちに漱石夫妻と猫にまつわる原稿が書けてしまった。それが今週月曜日号の『猫と漱石夫妻』である。
→ http://www.e-comon.co.jp/magazine_show.php?magid=3706

●このように、当初考えていた富有柿も正岡子規も完全にどこかへ行ってしまった。お蔵入りだ。
こうした、実に泥くさい作業だが、これをかっこよくいうならば「クラフティング戦略」という。

飛行機を作ろうと粘土をこねくりまわしていたら、何とも不思議なロケットが完成した、というようなものである。
クラフティング(手工芸)しながら、予期せぬハプニングを待つわけだ。

●トム・ピーターズはこの技法を仕事に活かせという。

『セクシープロジェクトで差をつけろ』で「馬鹿はメモをとらない」と、次のように主張している。

・・・
すべてはアンテナをつねにピクつかせていることから始まる。紙でも電子でもいいが、まずは「観察ノート」をつくってみよう。
(1)ムカつくことに出くわしたら
(2)すごいものに出くわしたら
なんでも書き留める。どんな小さなことでもいい。ポイントは、ものを見る眼を養い、小さなことに感動できる感性を磨くことにある。
・・・

●トムの奧さんは一回の出張で、ノート40ページ分を埋めて戻るという。そのノートにはメモあり、スケッチあり、新聞や雑誌の切り抜きから広告までビッシリだそうだ。

トム自身も2時間のプレゼンを聞いたら20ページはメモをとるらしい。
そして、30分以内に人のいないところへ行って5×7インチカード一枚にそのポイントを整理してしまうという。

●メモとアイデアを書きまくり、そのあとカード一枚に整理する。
それが上手な生産活動のやり方で、私の場合は、マンダラ手帳を使ってマンダラ一枚にメモを整理している。

●アメリカのコンサルタント、マーク・リービーはトムの影響を受けて一冊の本を書いた。『書きながら考えるとうまくいく』(PHP)という邦題で、副題は「プライベート・ライティングの奇跡」という。

●トムがこの本の序文を書いている。

「ライティング(書くこと)の役割はクリエイティブな思考と実用的な問題解決のための究極の活性剤になる」として、本書の技法をぜひとも取り入れるべきだと応援演説をふるっているのだ。

あいにく絶版なので、ほしい方は中古本を手に入れるか、図書館に行くしかない。一応amazonのリンク先はこちら。↓
⇒ http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=3024

●私がこの本を読んで「いいね!」を押したくなったポイントを箇条書きしてみたい。

・誰でも天才になれる”瞬間”がある。デキル人はその”瞬間”がいつ、どのようにしてやってくるかを知っていて、それを意図的に創りだしている

・書くにあたっては、ノートの種類やサイズは問わない。ペンで手書きしてもよいし、パソコンなどでやってもよい

・大切なことは書くスピードである。猛烈な空腹がおそっているランチタイムに同僚を待ちきれず、「先にデニーズに行く」とメモ書きするスピードで書くとよ
い。そのノートは自分だけが判読できれば十分だ

・ライティングしたものは他の誰にも見せない。自分の冴えない考えや下手くそな文章など、すべて許容する。そうしないと書けない

・肩の力を抜いて、ふだんの会話言葉で書く。偽りのない素直な言葉で書く

・自分の思考をふだんの限界以上に延長させてみる

・たびたび、焦点を変えてみる

●その他、いくつかの技法があるがこの本を読破しなければ出来ないことではない。
すぐに一冊のノートと書きやすいペンを手に入れ、何かの設問を自分に与えてみよう。

●困っていることや、やりたくてもできないままでいることを自分に問いかけてみるとよいだろう。
あるいは、あなたのWish Listの中から重要なものを選び、「どのようにしたら」で始まる疑問文におきかえてみるのも良い。

・どのようにしたら2012年中に月商○万円体制に乗せることができるだろうか?

・どのようにしたら、Facebookで望む成果を出せるようになるだろうか?

・どのようにしたら、おいしいものを食べながらも適正体重におさめられるようになるだろうか?

こうした問いかけに自問自答し、時には架空の”他人”も会話に巻きこむことで、斬新な視点が加わる。紙を2枚、3枚と書くうちに、書く前とはまったく違うインスピレーションが得られていることだろう。

※ちなみに今日の原稿も書きながら考えた結果、二時間前には想像もできなかったものになりました。(武沢)
このワザを使わない手はない!