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むき出しにせよ、悪の化身

●パリーグのあるベテラン投手が、「正直、『野球はもういいかな』と思っていたんですけど、不景気だしこんなにいい商売はないので、もうちょっと野球界での滞在日数を増やしたいなと後ろ髪ひかれていますね」と発言していたことを最近になって知った。

●幸か不幸か発言の主は地味な投手。
奥様が元アナウンサーということで多少はテレビ露出があるが、この発言が大きな問題に発展していないのはたしかなようだ。
もしこれを他の人気選手が言ったとしたら、プロ野球界は放っておくまい。

●もともとやる気が伝わってこないタイプの投手で気に入らなかったのだが、この発言を聞いて私はこの投手が一気にキライになった。

選手がどんな気持ちで野球をやっていようが本人の自由だが、「こんないい商売はないので、もうちょっと滞在日数を・・・」などの放言をテレビでやってしまうデリカシーが気に要らない。他の選手に失礼だろう。逆に。こんな選手に押さえ込まれているパリーグ打者に奮起をうながしたい。

●私は真逆の人が好きだ。

白雪姫の小人たちが上機嫌で歌う「ハイホー、ハイホー、仕事が好き」という一節を私もときどき鼻歌するが、あんな陽気さで仕事を楽しむことができたら、本人はもちろん周囲だって明るくなるだろう。

→ http://yaplog.jp/papanet/archive/377

●仕事がいつもこんな鼻歌気分でやれたら最高なのだが、現実は厳しい場面もある。

たとえばバレリーナ。少しでも良い役をもらいたい。できればプリマ(主役)の座を射とめたい。そのために連日猛特訓するが、選ばれるのはたった一人。

●エルサレム(イスラエル)出身の女優・ナタリーポートマンがバレリーナ役を演じる映画、『ブラック・スワン』を昨日観てきた。

恥ずかしながら、この映画がサイコ・スリラーだったとはつゆ知らず、途中までなんて不気味なんだと思いながらみていた。だんだん怖くなっていってから、「これはスリラーなんだ」と気づいた。それにしても後半の疾走感や緊張感はさすが話題作。

●ストーリーはいたってシンプルだ。(若干ネタバレ含むので要注意)

『白鳥の湖』の主演を誰にするか。監督が若手を抜擢する意向であることは明らかだったが、候補者は複数いた。
もし潔白なホワイト・スワン(白鳥)を演じるだけなら、ニナ(ナタリーポートマン)が完ぺきな適役だった。

だが、官能的なブラック・スワン(黒鳥)も演じなければならない。

そちらは、リリー(ミラ・キュニス)の真骨頂だった。少しでも監督に取り入ってプリマの座を射とめたい彼女たちのすさまじい相克。

●最後は、幻聴や幻覚に襲われながら舞うニナ。
悪の分身ブラック・スワンが乗りうつり、彼女の首筋から背中、そして腕にかけて本物の鳥肌がくっきり浮き立つ。それはニナにとっての新しい目ざめだった。
肌から黒い羽毛が生え、羽の音をたてながら舞う様は妖艶で鬼気迫り、会場を興奮の渦に巻きこんでいく。

●ナタリーポートマン自身、この『ブラック・スワン』で舞うために特訓に次ぐ特訓をかさねた。バレエのシーンで代役を使っている・いないで論争がおきているが、そんなことはどうでもいい。どうしても気になる方は、ご自分の目で確かめていただきたい。

また、ニナのコスチューム(練習着)のデザインは、ドイツ在住の日本人ダンサー兼デザイナーの竹島由美子さんが担当したというニュースもこの映画の話題に花を添えた。

場内は圧倒的に女性、しかも20代、30代の若い女性が多かったと思う。

★ブラック・スワン http://movies2.foxjapan.com/blackswan/

●サイコスリラーだけに、スカッとしたハッピーエンド作品とは言えない。
だが、内に秘めた闘争本能をむき出しにしていくニナの姿をどうか、冒頭のベテラン投手には観てもらいたいと思うのだが。