●日本中どこへ行ってもコーラの値段はほとんど同じ。ペットボトルだと1本120円～150円で買える。それ以下で売っているお店があるのは知っているが、冷蔵庫に買い置きするのが面倒なので、その都度コンビニか自販機で買って飲む。
●中国に行ってコーラを飲むときには注意が必要だ。
町のスーパーなどで買うと一本30円～50円だし、ホテルの冷蔵庫だと100円～200円くらい。そこまではよい。
問題は、空港やホテルのレストラン。何気なく頼むと、なんと同じコーラが一本500円以上になることがある。そこには10倍以上の価格差があるのだ。
●中国のどこの空港だったか記憶にないが、簡易食堂でコーラと小さいサンドイッチを二人分頼んだだけで3,000円を超える金額を請求された。
旅の楽しみのひとつは、買い物や食べ物の値段に驚く（高い、安い）ことだと思っているので、コーラの高さに憤慨しているわけではない。
ただビックリしているだけだ。
●日本でもナイトクラブやバーでコーラを頼めば千円を超えることがある。その場合には、それなりの雰囲気とグラス、氷、レモン、ストローなどの付加価値があるものだ。
だが中国ではそうした付加価値がほとんどなく、缶のまま（しかも冷えていないことが多い）ポンと出されて10倍の値段差があるのだ。
●それ以来、私は学習した。
コーラがほしい時には「トゥオ・シャオ・チエン？」（幾らですか？）と聞くようにしている。こちらの発音が悪くて通じないこともあるので最近は、iPadやiPhoneのソフトを立ち上げて、その画面を見せる。
そうすると店員さんが指を使って値段を教えてくれる。時には手書きソフトを立ち上げて、そちらで筆談することもある。
●このようにして、私の中国語は「トゥオ・シャオ・チエン？」だけが上手になっていった。
自分の名前だけ上手に書けるのと同じで、よく使う単語だけがどんどん発音上手になる。
●あるとき、書道発祥の町へ行った。
町のいたるところに人が腰かけられる程度の高さの平らな石板があった。その脇には、水が入ったバケツと筆。「何だろう」と思って周囲をみたら、観光客が思い思いに文字を書いていた。
水で書くのですぐに消えていく。
●「ははぁ、書道の練習だな」と思い、私はそこに「がんばれ社長！」と書いた。最初は黒々していた文字が、みるみる薄くなり、やがて完全に消えそうになった。私はあわててその上から同じ文字を書き足した。
今度は、前のものより書道の基本「止め、はね、はらい」を意識して書いたので、少し上達したようにみえた。
●そんな作業をくり返していたら、あることに気づいた。
理念や目標というものは、この石板の上の文字のようなものではなかろうかと。
いくら上手に書いても放置すれば消える運命にある。だから、消える前にまた書かねばならない。そして、書くたびに上達する。
同じ文字を何回も何回も書き続けると、やがて石板の上に溝ができる。
そうなればなるほど、自分の文字は消えにくくなる。
●できれば、石板の上に書く文字は、「トゥオ・シャオ・チエン？」のような生活用語ではなく、もっと意味のある大切な目標やメッセージにしたいものである。
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【編集後記】
◆ゴッホの生涯を描いた舞台『炎の人』の脚本は200ページ以上におよぶ大作。その7割が主演・仲代達也氏のセリフだそうです。もうすぐ78歳の仲代氏は、「セリフを覚える作業さえなければいい商売なんですけど」。
そんな仲代さんより一つ年上の曾野綾子さんは「75歳くらいから肉体の衰えを感じはじめた」と書いています。つまり、それ以前は衰えを感じたことがないということ。
超・高齢社会にあっては、50や60で衰えや疲れを論じるのはおこがましいと言えるようになりたいものです。
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