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山頂でにんにくを売る女

※今日の話は、実話を元にして人物が特定できない程度に内容をアレンジしました。人物さがしをされてもムダだと思います。

●「黒にんにく」は、生にんにくを1週間蒸し焼きにし、じっくりと熟成させた自然食品で、美味しいだけでなくポリフェノールの含有量は生にんにくの10倍もあって身体に良いらしい。
そんな黒にんにくを製造販売している赤石町子(あかいし まちこ、仮名、38歳)社長のお話を聞いてきた。

●自宅でも作れる「黒にんにく」なのだが、製造過程を工夫することによって、より美味しく、より身体によい食品ができあがる。
赤石社長は、日本全国で売られている「黒にんにく」を実際に購入分析し、”我ながら最高!” と思えるものの開発に成功したという。

●彼女はご主人と子供の三人家族だが仕事が大好きで、ヒマがあれば新しい健康食品を研究開発している。
食品を加工して未知の健康食品を創りだすことが大好きで、学者肌というか職人肌のところがある。それでいて、人を見たら営業を始めるほど営業肌なところもある。

●そんな赤石社長の唯一の趣味が登山だ。
家族の協力を得て、年に2~3回は単独で槍ヶ岳や穂高岳など本格的な北アルプスアタックをする。それ以外に、家族で日帰り低山ハイクをすることも多いという。

●以前、赤石社長がひとりで剣岳に登ったときのこと。

山小屋で疲労困ぱいしていたご婦人がいたので、「黒にんにく」を食べさせてあげたところ、みるみる元気が湧いてきたことがあった。
しかも「香ばしくて美味しい」と味も評判だった。
「どこで売ってるの?どうしたら買えるの?」とご婦人に何度も聞かれた。

●それ以来、たくさんの試食品をザックに入れて登山するようにした。
試食品が入っていなくてもザックの重みは10キロ近くある。そこに、「黒にんにく」を何十個と入れるわけだから重みは20キロになってしまう。

●私も今までに何度か北アルプスに登ったことがあるが、ザックは8キロ以内にとどめるようにしている。登り一辺倒の急勾配では、ザックの重みは肩に食い込み、痛いだけでなく体力も奪われる。
男性が8キロでも辛いと思うのに、女性がよくも20キロを担げるものだ。

「黒にんにくは私の子供。ザックは子供だと思えばこの重みは喜びよ」と彼女は笑う。

●赤石社長の会社では数年前から「黒にんにく」をインターネット通販し始めた。普通にやっていたらライバルが多くて結果が出ないのだろうが、山頂での試食品配りが効いているようだ。

山頂で休んでいる人たちに試食の黒にんにくを配り、「おいしいね」とか「あ!これいい」と言ってくれた人には自社サイトのPRチラシを手渡す。
「良かったらこのホームページで注文してね。私が社長やってるから」と笑顔で言うと比較的高い確率で注文が来る。

●趣味と実益を兼ねるというが、赤石社長は大好きな仕事と唯一の趣味を見事にドッキングさせ、結果を出しはじめている。

北アルプスの登山道や稜線にはたくさんの山小屋があるが、赤石社長の野望は、まずその山小屋を彼女の「黒にんにく」で独占すること。
その次は南アルプス、そして・・・、という具合に日本中の山で買えるようにすることだ。

●私はかつて、槍ヶ岳の山頂でヴァイオリンを弾いている女性登山家を見たことがある。たぶん大学生だろう。

しかも演奏されていた曲は、
・・アルプス1万尺 小槍の上で アルペン踊りをさあ踊りましょう・・
あの曲だった。

その演奏を聞いた山頂の20人ほどが皆、感動し拍手した。男性数人のグループから彼女に冷えたスイカがプレゼントされていた。

●山はすがすがしく、美しい。

あなたも山頂で「黒にんにく」をもらったら、ありがたく受け取ろう。

また、あなたの製品・サービスも特別な状況下でセールスしたら、赤石社長の「黒にんにく」や山頂のヴァイオリニストのようにもっと感動されるのではないだろうか。