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思いっきり戦う

論語にこんな一節がある。

「子曰。不憤不啓。不非不發。」

・・・子(し)日(のたま)わく、憤(ふん)せずんば啓(けい)せず、非(ひ)せ
ずんば発(はっ)せず
・・・

訳すとこうなる。

・・・孔子は云われた。「問題意識をもって自ら取り組もうという情熱のない者に何かを教えても伝わらない。また、問題を解決しようと粘り強く努力する気持ちのない者に何かを教えても、身につかない」

学ぶ者の姿勢が問われるのである。

道元禅師もまったく同じことを言っている。
鎌倉幕府から「説法を聞きたい」と呼び出しを受けたとき、普通なら喜んで鎌倉に行くはずなのに、にべもなくこう断っている。「もし本当に仏法を学びたいのであれば、山川紅海を渡ってでも来て学びなさい。その志がない人に、こちらから出向いて教えたとしても、聞き入れることはないでしょう」

学ぶ姿勢のない者には、誰がどのように教えようが伝わらない。それを知恵者は熟知している。反対に、学ぶ姿勢が本人に強くあれば、どんなにひどい環境でも、そこから学び、吸収し、成長するだろう。

「一級建築士の資格をもってるの?」と尋ねられ、二級の資格すらもっていないことをありのままに施主に話した。そのときのお客の表情を忘れられないという建築家・安藤忠雄氏。その後、仕事をしながら独学で寸暇を惜しんで建築の勉強をした。「やはり知識に一番飢えていたのだろう。どんなに経済的に苦しいときも、たとえ食事を一回抜いてでも、本だけには惜しみなく金をつかった。建築雑誌などが教えてくれる最新の現代建築の世界と、そこから受ける刺激にはそれだけの価値があったからだ。むしろそれらの与えてくれる夢と希望があったからこそ、厳しい現実を何とか生きていけたのかもしれない」(安藤忠雄)

一級建築士になり、事務所が拡張していった。本で学ぶことは減ったが、闘う建築家として世界中の建築家にコンペを通して挑み続けた。そのころの様子を、『連戦連敗』のなかで次のように述べている。

・・・私は自分なりの建築の闘いを始めた。その闘いは、現在もなお続いている。それなりに経験も積んできたはずであるが、状況は相変わらず厳しい。近頃はコンペによる仕事が多いので、とりわけそのことを実感する。何しろコンペはほとんど連戦連敗といっていいほどの惨憺たる状況なのである。常に競争状態という緊張にさらされるし、その上その苦労もなかなか報われない。
・・・

そんなとき事務所のスタッフは一様に、「またコンペか」と諦めともつかない表情をするらしい。しかし、そのようなギリギリの緊張状態の中にあってこそ、創造する力は発揮されると安藤は考えている。負け続けていれば、使い果たす知力・体力・精神力、それに財力は半端でないはずだ。

建築家は誰よりも思いきり戦う情熱家でなければならないと安藤氏が教えてくれている。「建築家」のところを「経営者」「起業家」「専門家」に当てはめて考えてみよう。

そんな安藤忠雄氏が今月、大阪で講演される。今回は建築をテーマにしたものではなく『仕事をつくる』と題して経営者やビジネスピープルを対象に行われる。主催は株式会社エックスラボ。(藤 勝行社長、本社:大阪、広告代理、ビジネスコンサルティング)

9月13日(日)安藤忠雄講演 詳細・申込み
http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=4327

私も参加する。あなたも会場でご一緒しませんか。