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Get Jazzed!!

●「よし、よし、よ~し!」と絶叫のカーリング解説で一躍有名になった小林宏さん(62)にメディアの取材依頼が殺到しているらしい。
また、氏が代表をつとめるカーリングクラブへの入会・問い合わせも殺到しているという。

●フジテレビの今朝の番組にも小林さんが登場していたが、自費でカーリング場を作ってしまい、夜寝ていても夢でガッツポーズをするほどカーリングが大好きらしい。
インタビュアーに向かって、「生活の100%をカーリングが占め、残った部分で仕事をしている」と語っていたが、少年のような62才。こんなおじさんになりたいものだ。

●そんな小林さんとほぼ同年代の粋なおじさんに先週土曜日、お会いした。

それは、都内ではとても有名な「ジャズタクシー」のドライバー安西敏幸さんで、不況のタクシー業界にあって「それも対岸の火事」と安西さん。以前から噂に聞いていたが、ついに氏のタクシーに乗ることができたのだ。

●まず、ジャズタクシーとは何か。
以下、若干のネタバレが含まれるが、それによってジャズタクシーの魅力が損なわれるものではないと確信して書かせていただく。
それに選曲はその日の気分で毎回変わるので、以下はあくまで先週土曜日の場合。

1.おそらく世界に一台しかない真空管アンプを積んだタクシー。
もう一台車が買えるほど音響機材に投資しただけあって、音楽には詳しくない私が聞いても感動する音色だ。
澄んだ音がタクシー空間のなかで溶け合って、コーヒーにミルクを落としたように音がからまりあうのがわかる。ずっと目を閉じて音楽に耳を傾けていたいと思ったほど。

2.90分のクルージングで安西さんセレクトによる都内の(隠れた名)名スポットを巡る丸ビル前に集合し、タクシーに乗り込むとまずはフランクシナトラの「ニューヨーク・ニューヨーク」が流れる。
最初の目的地・東京リトルニューヨー区へ向かう。氏があえて「ニューヨー区」というほど、その場所からながめる景色はハドソン川の対岸から見るマンハッタンのようだ。
正直、ニューヨークのド迫力には及ばないが、東京にこんな美しい夜景スポットがあったのかと驚く。
前もって計画し、ここで彼女にプロポーズする男性が何人もいるそうで、緊張のあまり全身を震わせている男性の尻を蹴飛ばして励ましたこともあったとか。

3.移動中に流れる名曲の数々
12,000曲入っているiPodの曲を変えて、「これ、誰だか分かりますか」と歌手あてクイズが始まった。
迫力ある女性なので黒人シンガーだと思っていたら、なんと美空ひばり。
次の男性は最初から日本人と聞かされていたのでフランク永井をすぐに当てることができた。
だが往年のハリウッドスターで今も現役の人がジャズの名曲を歌っているのは当てられなかった。それは、クリント・イーストウッドの歌声だった。それを聞いてしびれた。

4.次いで東京のフィレンツェへ
日本橋に、鼻をなでると幸運を招くイノシシの像がある。
そこはピジョン株式会社の本社前。17世紀のイタリアの彫刻家ピエトロ・タッカによる「幸運を招くイノシシ像」の複製がここにあるのだ。フィレンツェの広場に本物があるそうで、この複製もゴリヤク絶大で皆が触って鼻がテカテカになっている。

5.「天空の架け橋」へ
首都高に入るとディープパープルの名曲「ハイウェイスター」に乗って車もガンガン加速する。あるお客がプレゼントしてくれたCDだそうで、それ以来、この道ではこの曲をかけることにしているそうだ。加速が必要なときはこの曲にかぎる。

やがてお台場を左に見ながらレインボーブリッジに入る。ワーグナーの名曲(題名失念)に乗ってながめる夜のお台場周辺は幻想的としか言いようがない。
「天空の架け橋」と安西さんが評したが、ちっとも大げさなんかじゃない。ここで泣く女性も少なくないというが、私も胸が熱くなった。

6.東京タワー
東京タワーの照明が消えた瞬間を見ることができたカップルはゴールインするという都市伝説があるとか。
毎晩0時にはライトが消えるので、それを待つカップルも多いそうだが、安西さんは週末の二日間だけは、午後8時ちょうどにライトが一瞬消え、次に点灯したときにはクリスマスツリー状のデザインになるのを知っている。
港区の正則高校脇にあるある場所へ行くと、タワーの全容が見えるスポットがあり、そこで5分間音楽と安西さんの語りを楽しみつつ待っていると、本当に消えた。

7.フィナーレは都内23区で一番高い山で幸せ祈願
「愛宕山」山頂に車で登る。山頂にある愛宕神社には歩いて「出世階段」をのぼるのが定番。この階段を上ると出世すると言われている。
だが、ジャズクルージングではあえて裏山を車で一気に登るのが王道。この神社で出世と幸せを祈願してクルージングを終え、丸ビル前に戻る。

●毎晩7時からと9時からのジャズクルージング。
完全予約制でかなり先々まで埋まっているようだが、もし当日でも空きがあれば対応してくれるそうだ。これで90分13,000円はかなりお値打ちだと思った。

●ジャズクルージングのコースと所要時間は決まっているが、希望があればアレンジしてくれるだろう。同様に、聴きたい曲があれば、可能なかぎりリクエストにも応じてくれるはずだ。
持参のiPodをかけて欲しいというお客もいるそうだが、もちろんそれにも対応してくれる。

●どんな人がどんな理由でジャズタクシーに乗るのだろうか。
一番多いのはカップルで、クルージング中のプロポーズは過去において53戦53勝0敗と成功率100%らしい。
ほかには、夫婦、親孝行、バースデー、記念日、定年退職などにも利用された。

●40年間勤め上げた会社も今日が最後の勤務。夕方仕事が終わり、部下や後輩から花束と記念品をもらう。
みんなに拍手で見送られながら会社の正面玄関から自宅までの道のりを安西さんのジャズタクシーで帰った人もいるとか。一生の思い出は大切にしよう。

●ジャズタクシーで人生に節目を付けたい。

私も今度はあの人と、あのお祝いのためにストロー・シャンパン片手に乗ってみたい。

がんばれ安西さん!

安西さんのジャズタクシー http://homepage2.nifty.com/jazztaxi/