「エクセレントへの道は、いますぐエクセレントではないことをすべてやめることだ」(IBM創業者:トム・ワトソン)
さすがに IBM の創業者は厳しい。その通りだと思う。問題はエクセレントの基準を明確にすることだろう。そしてその基準に全社あげて固執することが大切である。
だが私たちはエクセレントはおろか、平均以下の成果しかあげていない仕事でも後生大事にそれをつづける傾向にある。それは、やめる基準がないからである。したがって、エクセレントの基準とやめる基準の両方が必要となる。
こんな言葉もある。
・・・組織は、製品、サービス、プロセス、技能、人間関係、社会関係、さらには組織自らについてさえ確立されたもの、習慣化されたもの、馴染みのもの、心地よいものを体系的に破棄する仕組みをもたなければならない。要するに組織は、絶えざる変化を求めて組織されなければならない。新しい組織社会では、知識を有するあらゆる者が、4~5年おきに新しい知識を仕入れなければならない。(『プロフェッショナルの条件』ドラッカー、ダイヤモンド社刊)
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「絶えざる変化を求めて体系的に破棄する」ということは、何らかの基準に合致したらやめる、または、時期が来たらやめる、ということを前もって決めておき、それを愚直に守らねばならない。
たとえば「生産性が1,000万を二年連続で下回った事業(部門)から三年目に撤退する」とか「事業部損益が2期連続赤字の場合は理由のいかんにかかわらず即刻撤退する」などと決め、守る。
「エクセレントへの道は、いますぐ、エクセレントではないことをすべてやめることだ」というのは、そういうことである。「体系的に破棄する仕組みをもたなければならない」ということの実践形はこういうことである。
個人も同様。定期的に使用時間の実態調査をおこなう。最近はスマホアプリで簡単に調査できるようになった。自分の使用時間のパフォーマンスを評価する。相対的に低い仕事の下位二つは即刻止めるか、大幅に削減する。
このようにして「やめる」「破棄する」ことによってスペースが空く。そこに生産性や収益性の高い仕事を導入する。それが会社も個人も生産性向上に直結する手順である。
保守的な社員は(そもそも保守的であることが社員の役目でもあるが)、社長がどこかで勉強してくるたびに、「社長がまた新しいオモチャを見つけてきた」と考える。そして「今ですら忙殺されているのに、これ以上何をせよと言うのですか」と身構えてもいる。
そこに向かって社長が、「益のないことは即刻やめよう。さ、何をやめるべきか考えよう」などと言いだせば、社員は前のめりになって議論に参加してくれる可能性が高い。
さあ9月、何をやめよう?