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私のメルマガ作法

●明日から三日間、東京雑司ヶ谷の鬼子母神堂で鬼子母神会式が行われる。
鬼子母神(きしぼじん)とはインドの神様のことで、インド名はハーリティーという。彼女は、500人の子の母親でありながら、他人の子を捕らえては食べてしまうという人食い女だった。
そこで釈迦は、神通力をつかってハーリティーが一番可愛がっていた末っ子・ピンガーラを隠してしまう。
わが子の不在に気づいたハーリティーは、7日7夜さがし回るが見つからず、困り抜いて釈迦のもとにやってくる。釈迦は、子を失う母親の苦しみを彼女に悟らせ、仏教に帰依させた。鬼女だった彼女はそれ以降、子どもの守護神・鬼子母神に生まれ変わった。

●さて、この話からあなたはどのようなインスピレーションが得られるか、である。
「へぇ、そうなんだ。豆知識が増えてよかった。今度どこかで話してみよ!」ではもったいない。

ひとひねりかふたひねりすることによって、このネタがあなたのコンテンツとして一本のメルマガやブログの原稿になる。

●そこでまず、上の鬼子母神ネタから得られる気づきを考えてみる。
たとえば、こんな気づきがあるだろう。

・「鬼女」から「神」に変わる、そんな大変身ができるものなんだ
・やっぱり釈迦はすごい指導者なんだね
・それにしても母親の愛ってすごい。今も昔も母は偉い
・500人の母親ってあり得ない。ということはこれは作り話か?だとしたらハーリティーも架空の人物なのか?そもそも実話と伝説と寓話の関係ってどうなのだろう?
・釈迦が使った神通力とはどんなものだったのだろう。今も神通力を使える人っているのだろうか?
・・・etc.

●私はこの鬼子母神ネタを今朝、トイレのカレンダーで見つけた。それを読んで、「へぇ、そうなんだ」とまず感じた。そして面白いと思った。
その感じたものを、「経営」「経営者」という視点に置きかえて考えてみる。それはいつもとっさにやっている本能のような作業だ。

●こうした興味深い物語を背景にすることによって、メッセージに深まりを作ることができる。たとえば、「良い指導者になりましょう」、「相手にあった接し方を心がけましょう」などという、ありきたりのメッセージではなく、「釈迦が鬼子母神を鬼から神に変えた。経営者もそれに近い指導者を目指そう」などのように独自のメッセージに変身していく。
ごく当たり前のメッセージが鬼子母神ネタのおかげで凄みが加わるわけで、その凄みがメルマガやブログの凄みとしてネットを伝搬していくことになる。

●まったくゼロのところから価値ある何かのメッセージを生み出して、それをネットで発信することも大切だが、それに固執することはない。

すでに存在する事実を幾つか組み合わせることによって、まったく新しい妙味を創出することが大切なのだ。
古今東西の文学や、音楽・絵画・映画などの芸術もみな、組み合わせの妙に負うところが大きい。

●さて、酒造りでは、麹(こうじ)菌を繁殖させるために種麹(たねこうじ)を少量ふりかけるそうだ。
メルマガ発行もそれに似て、頭のなかでインスピレーションの稲妻を走らせるために、種麹に相当するものが必要になる。
脳のなかで稲妻が光ってくれないと原稿を書き始めることができないからだ。

私の場合、稲妻の発光が起きやすいベスト3は、

1位:人の話(テレビ含む)を聞いているとき
2位:朝のスターバックス(特に読書中)
3位:ネットで調べ物をしているとき
番外:ウォーキング中、講演セミナーをやったときの聴衆のリアクションから、自分の本棚を漫然と眺めているとき、新聞・雑誌から、買い物や食事など日常の一コマから、家族やスタッフの意見や感想から・・・etc.

という具合だ。それらが種麹になっているのだから、種麹がない生活をしているとメルマガの質があきらかに劣化する。

●だが、良くしたもので「彫るとは、彫りだすこと」(ミケランジェロ)である。私にとっては、「書くとは書き出すこと」である。

本当はAというメッセージを伝えるためにAの情報あつめにネットや書籍で調べ物をしていたら、Bという新しい情報が見つかった。

Bの話題の方が面白いぞ、ということでその原稿を書きはじめたら、頭のなかで別の稲妻が走り、結局、思いもよらなかったCというテーマで書き上げたくなった。だから、原稿の書き始めのところを大幅に削除して書き直した、というようなことがひんぱんに起こる。
一週間の半分はそんな原稿かもしれない。今日の原稿もそうだ。だから、完成原稿を読み返したとき、「へえ、こんな原稿になるんだ」と自分でも驚く。それが、会心の一本になったとき、その原稿は何度も読み返したくなり、思い出の原稿に昇華する。
こうした作業のだいご味を知ってしまうと、原稿書きはなかなかやめられなくなる。

●今日は当初の予定を変更して、「私のメルマガ作法」を書かせていただいた。