●責任感が強いのはよいが、それが行きすぎると、融通がきかない頑固な社員になってしまう。彼は役所づとめには向いていそうだが、中小ベンチャーの、ましてや営業部門の社員には向いていない。
「○○君、これをやってくれないかな」
「社長、それはちょっと問題があると思います」
「どんな問題?」
「こんな問題です」
「なるほど。じゃあこういう風にやれば問題はおきないでしょ」
「ええ、でもそうすると別の問題も起こりますし、私としてはそうしない方がよいかと」
「じゃあどうしろと?」
「なにもしないのが一番です」
●社長の頼みといえども自分が納得できないと拒否してしまうわけだ。
社員がたくさんいる会社なら、そういう “猛者” が少しは居てもよいのだろうが、会社が小さいのにそんな社員がいてはやりにくくてたまらない。
●もちろん社長のアイデアが間違っていることもある。
思いつきのアイデアを連発して現場を混乱させてはいけないが、思いつきを試せない会社はもっと良くない。
社長のアイデアの主旨を理解し、懸念する問題がおきないような代案をひねり出せるのが優秀な人材。
●愛知県のA社長は、「僕の会社にはイエスマンしかいらない」と言う。以前は理屈をこねて結局なにもしない社員もたくさんいたそうだが、今はひとりもいないという。
それだけを聞くと、どうみてもカリスマワンマン経営なのだが、いざ、会社へ行ってみたら社長が一番腰が低い。
●A社長の本来の性格は謙虚すぎて押しが弱いそうだ。だから、あえて月に一回、部下に「命令」を出すという。それは「依頼」でも「相談」でも「打診」でもなんでもない。あくまで「命令」だそうだ。
トップの責任における最終意思決定である。
●社内では気配りがいらないようにしたいというのがA社長の主旨。
社内調整にばかりエネルギーが奪われて、ビジネスアイデアを市場で試すという大切なことができなくなっては問題ありなのだ。
だからイエスマン集団にした、とA社長。
●その代わり、外部には辛口のコンサルタントを複数人雇う。営業専門、人事労務専門、経営全般の相談相手の三人を置くのだそうだ。イエスマン経営の弊害が起きないように、そうしているという。
社内で大人しく、気配りばかりしている社長には、参考になるかもしれない。