●「うちのかみさんは全然オレのことを信用してくれない」とぼやく男性がいるが、理由もないのに信頼をなくすことなどないはず。
充分な信頼があって結婚したのに、その信頼が地に落ちたのなら、然るべき理由があって当然だろう。
●私も他人事ではなく、ずいぶんとかみさんの信頼をなくすことをしてきた。
まず、いきなり新婚旅行でつまづいた。新婚旅行の思い出にと、36枚撮りのカラーフィルムを36本も奮発して撮影してきたのだが、現像写真を受け取りにいって衝撃が走った。
フィルムがカメラ本体にうまくからんでいなかったようで、最初の1本しか撮影できていなかったのだ。
「せっかくの旅行なので一眼レフで」と友人からカメラを借りたのがよくなかった。
「またハワイへ来なさいという神様の暗示だよ」とかみさんをなだめた。
●次に、新婚気分も落ちついた二年目のこと。
お金に困っていた私は、ある日、かみさんの持参金に目をつけた。たしか100万円ぐらいがまだ手つかずで残っているのを覚えていたのだ。
私はそれを株式投資に回して大きなリターンを得ようと考えた。うまくやれば、毎月10%リターンの複利計算で年に3倍ぐらいに増やすことだって夢ではないと考えた。
●「え、株?なに考えてるの。絶対ダメだから」と渋るかみさんを一週間かけて説得し、「絶対返す」という約束で100万円借りることに成功した。
何の株が良いのか分からなかったので投資新聞や株式雑誌の情報を元に、ある化学株を買った。
それがうまくいかなかったので、今度はある電気株を買った。
●それでもうまくいかないので、手っ取り早い成果を求めて投資レポートの会員になった。半年会費20万円を支払い、すぐにタイヤ株を買ったら急上昇した。
「この会は本物だ!」と思い、次々に買い注文と売り注文を指示通りにやるうちに、半年後に手元資金はゼロになっていた。
今度はかみさんに、「お前は投資家には向いていない。ちゃんと自分の仕事で世界を作りなさい、という神様の暗示だよ」と言ってなだめた。
●あれから20年以上たつが、いまだにハワイリベンジ旅行と持参金返納は実現できていない。
と言うより「時効」が成立したのか、最近あまり言われなくなった。
●政治は政権交代によって信頼を回復することができる。日本は長年それがなかったわけだが、今度の民主党政権では自民以外の受け皿も充分あるのだと国民に知らしめた。
●経営の信頼回復はどうするか。かみさんへの信頼回復はどうするか。
こればかりは誰かと変わるというわけにはいかない。
民主党の鳩山総理は家庭のなかでは家事を手伝うなどして奥様からも信頼を得ているというが、それと同じことを世の男性すべてが行う必要はないだろ。すくなくとも私には同じことができないし、やろうとしたらじゃまもの扱いされるかもしれない。
●そこは夫婦なのだからお互いに細かいことは目をつぶる。夫婦とはいっても互いに生身の人間だし全幅の信頼などめったにあり得ない。
信頼を損ねるようなことをしたときにそれでも信頼してもらえるかどうかが勝負で、日常茶飯の生活の中にその鍵があるのだと思う。
●もう一度ハワイへ旅行に行くことや持参金を返納することが信頼回復とは思わない。それではマイナスがゼロに戻るだけのこと。
プラスの信頼を勝ち得るには、悪いことをしないというだけではダメで、積極的な何か良いことをしなければならないと思う。
うまくまとまらないかもしれないが、明日につづく。