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松江、出雲を旅して

●金曜日に岡山非凡会を終え、翌・土曜日に特急やくもで山陰へ向かった。
岡山から二時間半で松江に着く。駅の売店で買った「ままかり寿司」と缶ビールを味わい、伯備線の景色と文庫小説を交互に楽しむ。
持参する本は太宰治の『人間失格』にしようか、道尾 秀介のサスペンス『向日葵の咲かない夏』にしようか、さんざん迷ったあげく道尾の方にした。
だが、これが暗くて奇妙な物語で、太宰を持ってこなかったことを後悔した。が、これしかないので最後まで読み切ってしまった。

●松江の駅前で客待ちしていたタクシーに乗り込み、「今日と明日、合計で数時間ほど観光案内していただけますか?」とお願いすると、ふたつ返事で受けてくれた。
松江ではおおむね、一日2.2万円の売上げがあればOKとされるタクシー運転手。その売上げを上げるためには10時間以上仕事をする。つまり一時間あたり2千円程度を上げればよいのだが、観光タクシーを引きうければ一時間5千円取れる。おまけに昼食やチップが付いてくることもある。だから彼らも観光タクシーを狙ってはいるのだが、こればかりは運頼み。

●岩手県の平泉出身のSさんは今年67歳。
長年、測量の仕事をしていたが30年前に共同事業に失敗し一文無しになった。「電車賃で行ける一番遠い町」として松江にたどり着いた。
落語家の橘家 圓蔵(たちばなや えんぞう)に似た風貌でどこかユーモラスなSさんは女性にモテたそうで、今の奥さんに拾われ、彼も免許を取ってタクシー運転手になった。
あれから30年、「自分は記憶力が乏しい」ので観光案内はまったく出来ないが、運転手向けに配られる観光案内マニュアルをお客に手渡すと、お客が勝手に読んでくれるという。
私も受けとって読んでみたが、なかなかよくまとまっていた。氏の東北弁なのか出雲弁なのか分からない解説を聞くよりマシだったかもしれない。

●そんなSさんに案内されたのが、松江城→武家屋敷→小泉八雲記念館という松江観光の定番コース。
松江城は別名・千鳥城ともいわれ、全国に現存する12天守のひとつで、昭和10年に国宝に指定されたが昭和25年に文化財保護法の制定があり「重要文化財」に改称された。

●「お昼は出雲そばを食べたい」と私が言うのでSさんは「神代そば」(かみよそば)へ連れていってくれた。
ここのそばは麺の腰が強いというか、「固い」に近い。
割り子そばのだし汁も醤油に近いほど濃い味なので、少量を垂らしてよくかきまぜて食べる。濃厚なそば湯にだし汁を落とし、そばにあわせて食すととても良い。そば湯を何杯もお代わりした。

●そのあとは、島根の読者・江角さんが「月照寺へ行け」とメールをくれていたので行ってみた。ここはあじさい寺としても有名でちょうど今があじさい最盛期で見事だった。

●その後、八重垣神社へ。ここの「鏡の池」での縁占いは全国的に有名で社務所の売店で占いの紙を買う。その紙に10円玉か100円玉を乗せて池の水面に置く。それが早く沈むほど良縁が近い。私の知人の知人は独身時代にここを訪れ、気の毒なことに最後まで占い用紙が沈まず、反対の岸まで行ってへばりついていたという。結局彼女は婚期が遅れ、今では外国で外国人と結婚してその国にいる。
それを聞いて、まんざらこの池も当たらないわけでもないと思っていたので私もやってみた。紙は二分で沈んだので、かなり早いほうだと思う。
→ http://www.shinbutsu.jp/45.html

●その後、玉造温泉の人気旅館「長楽園」までSさんに送っていただいた。明朝9時半にお出迎えいただく約束をし、午後3時にチェックイン。
「じゃらん 中国四国地方、51室~100室の部ランキングで二年連続で売上げ首位の宿」らしい。
天皇陛下もお泊まりになったことがあるという。だから私も期待が大きくふくらんでいたわけだが、う~ん、少々厳しい評価にならざるを得ない。

<私の評価>(各5点満点)
・温泉   3.5点(巨大な混浴露天風呂「竜宮の湯」は圧巻。でも温泉に加水あり・循環ありとは残念)
・料理   3.5点(おいしいが、食事処の雰囲気が殺風景で、ちょっと流れ作業的)
・旅館   3.0点(団体・グループ向け旅館という作り)
・サービス 3.0点(個人客は肩身が狭く感じた)
・周辺環境 3.0点(日本庭園があったが道に迷って引き返した)

グループや団体で来るには都合の良い旅館だと思うが個人や家族では平均的すぎる。
★長楽園 http://www.choraku.co.jp/p_onsen.html

●翌日もSさんのタクシーで松江から出雲へ。
40キロあるので、タクシーで一時間近くかかる。途中、宍道湖の名産品店などに立ちよったりしたので、出雲大社に到着したのはお昼近かった。
まずお参りし、神棚に飾るお札を購入した。10月のことを別名・神無月というが、それは神々がここ出雲に集うから。
だから、ここ出雲では10月のことを「神在月」とか「神有月」(かみありづき)と言う。

★出雲大社 http://www.izumooyashiro.or.jp/

●江角さんがそばなら「かねや」と教えてくれていたので行ってみた。江角さんいわく、・・・「かねや」は出雲そばがおいしい店です。色々と食べ歩きましたが、ここの出雲そばが一番だと個人的に思います。・・・

地元の人がそこまで言うなら間違いないと思って入ったが、ここはまた、前日の「神代そば」とは打って変わって正統派の出雲そば。
Sさんも「うん、こっちの方が私は好きだ」と言っていたが、甲乙付けがたいぐらいに昨日も今日もそばがうまかった。
結局、割り子は普通三段重ねだが、私は五段のものを完食し、ビールと「のやきかまぼこ」をあわせて2200円也。

・かねや: http://www.tokusen.info/soba/kaneya/index.html

●出雲市駅から岡山を経由して名古屋へ5時間の大移動。週末の山陰の旅の総括は、自宅で『砂の器』(主演:丹波哲郎、加藤剛)を見つつクールダウンしていった。
出雲弁が東北弁と間違われるところから始まるこの物語は、舞台が奥出雲。