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商談科学 その4

「商談の科学」シリーズも今日の4回目でお開きとなる。日頃、商談技術でお困りの会社には好評のようで、何通かの激励メールを頂戴している。作る側としては、急に技術的なマガジンになった感じで、ちょっぴり違和感があるが、たまには良いか。

さあ、いよいよクロージングの局面。金額を提示し白黒の決着をつける場面で、いやが応でも緊張する。だが、この一瞬のために今まで膨大な時間を費やしてきたに違いない。ここで一発、バチッと決めてこそ、すべてが酬われるのだ。

クロージングの場面でのポイントは二つある。

ひとつは、金額面や支払面など、経済的条件だけが残された問題であることを確認しておくこと。逆に言えば、予算の折り合いさえつけばゴーサインであること、を確認してから条件提示に入るべきである。それは次のようになる。

「山田さん、私どもの製品・サービスについての概略は以上です。これをご利用になることで、山田さんの会社の~~という問題の解決に向けて、大きく前進の一歩が踏み出せると信じていますが、いかがですか?」

「はい、期待しています。」

「評価していただいて、ありがとうございます。さあ、山田さん、残る最後の問題は、必要な投資額は幾らか?ということと、どのようなお支払いパターンが選べるか、ということではありませんか?」

「はい、それが問題です。我社も充分な予算があるとは言えませんからね。」

「ご安心下さい、山田さん。その点も当社のウリの一つですから。

このようにして、クロージング場面とは金銭面だけを話しあう場であることを再認識しよう。製品・サービスの善し悪しと、値段の高い安いなどの議論とをごちゃ混ぜにした会話だけは避けねばならない。

従って金額提示をする以上は、それだけが残された最後の問題としたい。金額以外の問題がまだあるようなら、先にそれを解決してからクロージングに移る。どうしても製品・サービス面で解決できない問題があるのなら、金額提示は行わずに帰ってくるべきだ。

例外もある。それは、あなたの会社が価格の安さをウリモノにしている場合だ。競合他社の価格を大幅に下回る価格破壊者の側であるなばら、むしろ早めの段階で価格を見せることも効果的だ。

クロージングのもう一つのポイントは、二者択一または簡単な質問をクロージングトークにすることである。見込客に対して、決して「さあ、YESかNOか」などと決断を迫ってはいけないのだ。

ふつう、次のようになるだろう。

・月末と月初、いつごろお持ちすればよろしいですか。
・お届け先は会社とご自宅とどちらがよろしいですか。
・このような金額になっています。こちらにご署名をお願いしてよろしいですか。

これらの問いかけに答えてくれることが、そのまま契約の意思表示になるのだ。

見込客の側から次のように言ってくれることもある。

「武沢さん、わかりました。納得できたので私は決断します。結論はイエスです。さっそく契約手続きをしたいのですが、どうすればよろしいですか?」

だが、このように言ってくれる見込客は一年に一人もいない。間違ってもこのような反応が返ってくるのをジッと待っていてはならない。ほとんどの場合、あなたの確信あるリードにかかっているのだ。

たくみな逃げ口上が出てきて、契約が逃げそうになるときもある。

・「武沢さん、良い話ありがとう。あとはじっくり社内で検討させてもらって、こちらからお返事差し上げますよ。」
・「私の一存では決めかねますから、一度社内の会議に諮ってみましょう。あなたの名刺のお電話番号にご連絡差し上げますか   ら。」
・「2~3日考えさせて下さい。契約する方向で考えますから。」

こうした決断の先送りに対して、あなたはじっと手をこまねいているだけだろうか。何らかのトークが準備されていなければならない。

こうした逃げ口上に対しては、順番通りに狙撃銃の引き金を引くだけで良い。三発程度の実弾を装填した45口径をふところに持ち、それを使うのだ。(イメージの中で)見込客が何かの引き延ばしを言えば、まず一発目を撃つ。次に見込客が何を言おうとも、契約の意思表示でなければ二発目を撃つ。そのように三発目まで打っても構わない。

この三発の実弾、各々のトークはあなたが考えたもので構わない。大切なことは、確信をもって今日の決断を迫ることである。もし何らかの理由で、見込客のために引き延ばしを許可した方が良い、というのならそうすべきだ。だが、たいていの場合は、時間をおけばその分だけ意志決定に必要な知識や情熱は薄らぐものである。

たった三発の実弾をふところにもっているだけで、クロージングアベレージが驚くほど高まるに違いない。なぜなら、あなた自身が発する「今日決めるのだ!」という決意が見込客に敏感に伝わるからである。