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資産家の独り言

●中国や香港には無名の日本人億万長者がたくさんいる。マスコミなどには一切登場しないが、百億円を超える個人資産を築いた方だって何人もいるだろう。
中には株式や不動産などへの投資で財を成した方もいるかもしれないが、多くは実業で富を築かれた。
「がんばれ社長!」読者が多い「香港和僑会」の会員の中にも10億円を超える個人資産家は10人以上いるのではないだろうか。

●そのうち、すでに5人の方とはお目にかかってきた。

そして気づいたことは、5人中3人は勤勉タイプではないということ。
どちらかというとズボラなタイプである。それは私の主観ではなく、異口同音にその3人の方がご自分のことをそう評するのだ。

三人のうちのお一人、A社長はこう言う。

「武沢さん、ボクは高いところに登るのが好きでね、そこから地上を見下ろしながらコーヒーを何杯も飲む。人間がアリのようにチョコマカ動いている。急いでいる人、ゆっくり歩く人、よく立ち止まる人、走っている人、人それぞれに動き方が違うが、それを一人でボーと見ている。所詮、アリはアリなんだといつも思う。自分も地上へ降りればアリなんだ。ただ僕の場合、キリギリスでありたいと思っている。典型的なB型、右脳気質。自分は楽をさせてもらって、人を動かして儲けることしか考えていない。そのことに罪悪感もない。だから弁護士や医師に敬意は払うがそれで稼いでいる人をスゴイとは思わない。なぜなら、彼らは自分で動いてお金を稼ぐ人たちだから。ボクはそんなビジネスには最初から興味がないんだ」

●もう一人のB社長はこう言う。

「香港に来る前から私はズボラだった。まあ、でも50才までは一日数時間は働いていたと思う。でもそこから先は、社長業すら放棄し、オーナー業・投資家業にシフトしていった。60を超えた今では一日一時間も仕事をしていないのではないだろうか。ただ、世界中の市場やニュースには目を光らせていて、このスマートフォンだけはいつも手放せない。私は経営センスはないと思うが、運が強いので、運の良い人と一緒にビジネスするようにしてきた。運の悪い人とは、真剣になって別れるようにつとめてきた。そして自分にないもの、自分がやれないことをやってくれる人との付き合いを大切にしている。勤勉な人、まじめな人を採用し、彼らに気持ちよく働いていただくような組織と仕組みを作ってきた。私の仕事はほとんど何もないので役員報酬は取っていないが、四半期ごとに得られる配当だけで充分やっていける」

●B社長の場合は、役員報酬がゼロで、四半期ごとの配当金だけで充分すぎる生活ができるという。それは、タックスヘイブン(税金天国)だからかも知れない。だが、考え方としては日本の経営者も大いに参考になるだろう。

●『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』で著者のジム・コリンズは個人が成長するプロセスをこう語る。

◇第一水準 有能な個人
才能、知識、スキル、勤勉さによって生産的な仕事をする

◇第二水準 組織に寄与する個人
組織目標の達成のために自分の能力を発揮し、組織のなかで他の人たちとうまく協力する。

◇第三水準 有能な管理者
人と資源を組織化し、決められた目標を効率的に効果的に追求する

◇第四水準 有能な経営者
明確で説得力のあるビジョンへの支持と、ビジョンの実現に向けた努力を生み出し、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激をあたえる。

◇第五水準 第五水準の経営者
個人としての謙虚さと職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる。

●A社長とB社長が第五水準かどうかはわからない。
ただ、第三水準にあることだけは確かなようで、その見返りが何十億円ならば、それも悪くないと思ってしまう。

そしてこのお二人の経営者に共通しているのは、弱みを克服する戦略に長けている点だ。
自らは勤勉ではないので、勤勉さを要求されない仕事のスタイルを構築してきた。自らを適切に見抜いておられたわけだ。