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モティベーションが高い・低い、そして・・・。

「人々は驚きを愛する」とエマーソンに言われるまでもなく、私たちは「サプライズ」や「波瀾万丈」が大好きだ。エピソードに満ちたドラマのような人生物語をお聞きすると、こちらまで興奮してくる。まるで映画や小説の筋書きではないかと思えるようなお話しを聞きながら飲む酒には肴などいらない。「サプライズ万歳」「波瀾万丈万歳」である。だが、自分の人生や仕事もそうあるべきだとは考えないほうがよい。

現実の人生でみると、波瀾万丈では生産性に欠ける可能性がある。予期せぬできごとの連続ではなく、予定どおり淡々と、かつ、粛々とものごとが進んでいるときに仕事も人生も大いにはかどり発展する。好むと好まざるとにかかわらず「淡々と、かつ、粛々と」が人生の大半であり、そのとき、どのような気分でどのように過ごすのかが大切な視点となる。

そもそもモティベーションは「高い」か「低い」かの二択しかないと思っている人が多い。だが、モティベーションには「高い」と「低い」の中間があるのだ。それが「モティベーションが落ちついている」という状態で、その「落ちついている」ときが一年で一番長いはずだし、人生全体でもそのシェアが一番多い。そうでない例外人物が本当に映画や小説の主人公になるのだ。

できれば私たちは波瀾万丈ドラマの主人公になるのではなく、現実の人生で果実を手に入れよう。そこで目指すものはモティベーションが「落ちついている」ときに成果をあげることである。そのことに知恵と工夫をつかうのだ。

モティベーションは「高い」「低い」の二択しかないと思っている人のことを仮に二択主義と呼ぼう。二択主義の人は「低い」より「高い」方が良いと考える。だが、高かったときの自分と今とを比べると「今の自分では全然ダメだ」と考えてしまう。だからもっと刺激的になろうと新しい目標やアイデアをさがし始める。一生涯、もっと強い刺激を求めて渡り歩く「目標ホームレス」「刺激青い鳥」になってしまう。

私たちは大抵の場合、目標はすでにある。立派すぎるぐらいの目標が複数あるはずだ。しかしその多くはまだ実行されていないか、計画どおりに進んでいない。だから、計画の遂行とレビューにじゅうぶんな時間を割り当ててあげることだ。それは地味な行動であり、多分にひとりで行う実務レベルの作業だ。面倒くさく感じるものでもある。その地味さと単調さに飽きてしまったり、逃げ出してしまうことが大敵なのである。

刺激を外部にばかり求めてはいけないわけだが、ただし、ちょっとした Hack(小技)的なテクニックで大いにやる気が向上することがある。新しいペンやノートを手に入れただけでやる気が刺激されたりもする。新しいアプリを入れて俄然、毎日が新鮮に思えてくることもある。本やセミナーのなかで見つけた何気ない言葉(語彙)が新しい視点をもたらしてくれることもある。

そういう意味では、刺激を外に求めることもときには大切だ。だがより本質的なことは、淡々かつ粛々とした仕事を敵視せず、喜んで受け入れることである。モティベーションが落ちついていることを罪悪視しないことでもある。

モティベーションが落ちついているときに前進できる人が真の勝者たり得る。