●昨日のつづき。
武沢にアポをとり、経営マニフェストのチェックを受けようとしたまでは良かったが、花坂社長にとっては武沢から圧迫面接を受けているような”地獄のスタバミーティング”になりつつある。
「花坂さん、約束の45分が経ちました。ここから先は有料ですが、どうされますか?」という武沢。
「お願いしたいのはヤマヤマですが、いかほどの費用に・・」と花坂。
「じゃあ30分だけ延長に応じましょう。費用は抹茶フラペチーノ一杯」
「ふ~っ」という安堵の表情を浮かべ、花坂は新しいドリンクを運ん
できた。
●新しい飲み物を一口飲んだ武沢は、こう切り出した。
「花坂さんのお話はどうも、しどろもどろですね」
「しどろもどろ?」
「はい、そうです。何を言っているのか分からない。話しをしながら考えているようで、考え抜いたことを話しておられるのではない。だから話が長くなるし、脂あせが出てくるんですよ」
「そうですかねぇ、自分では考え抜いてきたつもりです。それをこうして『経営マニフェスト』に仕上げたわけですし・・・」
「あなたの言う”考え抜いた”というのは、計画書を作る上で真剣に考えたという意味でしょう。それを社員にも分かりやすく伝える工夫をしましたか?バリだらけ、トゲだらけの計画をまろやかなものに仕上げてあげなきゃ。それには、簡潔かつ明瞭に語る訓練が必要です」
「訓練?」
「そう、今やっているのが訓練です」
●武沢は続けた。
「もう一度質問します。今度は質問を二つに絞りますから、それぞれについて、花坂さんも私も納得できなければやり直しとします」
・経営理念を語ってください
・将来どのような会社になりたいか、どのような経営者になりたいかを語ってください。
●このあとスタバ特訓は一時間に及んだ。
花坂社長が帰路についたとき、充分すぎるくらいマニフェストがかみ砕かれていた。
経営マニフェストは完成させることが目的ではない。実行され、成果を生まなければならない。そのためには、実行段階で迷いや疑いがあってはならない。だから、社長も社員も充分すぎるくらいかみ砕いて理解しあっておく必要がある。
●三代目が会社を潰す。会社を伸ばすのも三代目であることが多いと聞いたことがある。その根拠は知らないが、偶然、花坂社長は三代目だ。しかも今期は業態転換という大チャレンジを行おうとしている。
相当な覚悟をもって経営マニフェストを作ったはずだ。完成したマニフェストを読み上げて説明することだったら誰でもできる。
それを自分の言葉で何も見ずに2分間スピーチにする。しどろもどろからスタートし、繰り返すごとに上達していく。
それが経営マニフェストの社長自身への落とし込みというものだ。
そこまでして練り上げられた計画は必ず実現する。