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ネクタイを毎月3本買う人は・・・

「どこへ行ってもボクは軽んじられます。コンビニの店員が前の客には丁寧な言葉を使っていたのに、ボクになるとタメクチなんです」

そう語る A 君はたしかに軽くみえる。40才近いが20代に見えなくもない。軽くみえる理由は明白で、服装に無頓着すぎるからだろう。登山シャツにジーンズという姿が悪いのではなく、ピッチリ着こなしていないことが問題。ファッションを変えれば周囲の態度も変わってくるだろうに。

外見よりも内面が大切という意見に対し、「見た目はその人の一番外側の中身」と言ったのは稲盛和夫氏。日本では「馬子にも衣装」という諺がある。西洋でも同様に「人はその制服の通りの人間になる」(ナポレオン)や、「服装が人をつくる」(マーク・トウェイン)などと言われる。古くは、シェイクスピアの戯曲にも服装の大切さを説いた言葉がしばしば登場する。

「スーツやネクタイなんて堅苦しい。リラックスできるジーンズや T シャツの方が仕事をしやすい」という人もいる。クールビズやエコといった言葉がファッションの乱れを増長させているのかもしれない。「リラックスだ」「エコだ」などと言いだしたら、スウェットやパジャマの方がもっとリラックスできるわけだ。どこまでリラックスして良いかの線引きが必要になってくる。そんな線引きなんて要らない、という人もいる。イタリア生活が長い塩野七生氏は、「リラックスしてはいけないのが洋服の本分のひとつ」という名セリフを言っておられる。リラックスしたければ自宅でどうぞ、というわけだ。

そういえば最近、服装にこだわらなくなったなという自覚があるあなたに。『ネクタイを毎月3本買う人はなぜスゴイ仕事ができるのか』という本がある。タイトルはずいぶん恣意的で、「その根拠を見せろ」と言いたくなる。しかし、ネクタイ購入頻度と仕事の成果はすこしは相関関係があるのかもしれない。

それよりもこの本は、独断と偏見に満ちたエッセーとして、楽しく読み通せる一冊だ。ところどころ忘れかけていた服装に対する高い志を思いだし、ハッとするところがある。作者は野呂エイシロウ氏。放送作家をしながらカリスマ経営者たちに「自分の見せ方」をコンサルティングしておられる方だ。

氏自身が作家時代に服装を変えただけでギャラが40倍になった経験があるという。たったそれだけのことで、自分に対する周囲の評価や扱いが一変したというのだ。それ以来、服装はもっともパフォーマンスが高い自己投資と認識し、服装にお金をかけるようになった著者。

とは言っても、高額なスーツや腕時計、バッグで身をかためようという話ではない。むしろその反対で、スーツで言えば既製品の数万円から10万円以内のものをシーズンごとに買って、それを2~3シーズンで使い果たす。スーツがくたびれていないことや身体にフィットしていることが肝心なのだと作者。

ネクタイなら「3,000円から5,000円ので充分」。そのかわり、月に最低でも3本は買い足し、買った同数だけ捨てる。そもそもビジネスで使う服装ゆえに、ファッションで個性を出す必要はないという。必然的にジャケットやスーツは無地。シャツも白無地ばかりとなる。ネクタイはレジメンタルが基本でドットやペイズリーは選ばない。ただし靴だけは良いものを手入れしながら長く使うのが作者流だとか。

この本の帯にこうある。

・・・23年間「一流の人」と至近距離で仕事してきた結論です・・・

ワードローブの話だけでなく仕事術や習慣術についても言及しており楽しめる。シャツならここ、スーツならこの店、靴はここという具合にオススメの店まで載っているのがユニークだ。悪くない一冊。

ネクタイを毎月3本買う人はなぜスゴイ仕事ができるのか
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