夏休みに入って早々、今年高校生になったばかりの次男に「この夏の個人的課題」について聞いてみたところ、「面白い本を読みたい」という答えが返ってきた。
今まで面白いと思える本には出会っていないという。私にとっては、中学生のころの『坊ちゃん』(夏目漱石)が読書の魅力に気づかせてくれた最初の本なので、次男が中学生になったころに買い与えたことがある。一応最後まで読み通したが、「あまり楽しめなかった」そうだ。
父と息子が同じ本を面白がるとは限らないと知り、それ以来、本を買い与えるのは控えてきた私。だが、この夏休みはそのリベンジができそうだ。
7月29日(日)、場所は名古屋の丸善。二階には文芸書や文庫本のコーナーがある。
ひと通り売り場を一緒に歩いたあと、「何系の本を読んでみたい?」と尋ねる私にむかって次男は、こう言った。
「モホウハン」と。
「モホウハン」。中華飯の一種? それとも江戸時代の盛岡藩の近くの藩?
次男が指さす方向をみたら、『模倣犯』のことらしい。もちろん、映画にもなった宮部みゆきの大人気ベストセラーのこの書名は知ってはいたが、コワイものが大嫌いな次男がミステリー本を選ぶとは思ってもいなかったので、意表を突かれた。
それに私自身、宮部本は一冊も読んだことがないので、コメントのしようがない。
せめて、大手出版社の「夏の文庫100選シリーズ」などから選んでくれることを期待していたのに・・・。
「ホホォ、もほうはんかあ」とつぶやきながら『模倣犯』(新潮文庫)の第一巻を手に取り、帯や背表紙を読む。
たしかに面白そうで、私自身も無性に読みたくなったので「よし、これにしよう」と買って家に帰った。
自宅にもどり、いきなりガンガン読み始めるのもよいが、読書戦略会議を開いた。
私:この本は厚いぞ。この第一巻だけで600ページもある。いつまでに読み終えるつもりだ?
次男:さあ?できれば全五巻を夏休み中に読みたい。
私:じゃあ、まず平均スピードを計測しておこう。
次男:平均スピードって?
そこで私が次男に説明したのが一時間に何ページ読めるかという読書スピード。10分間で何ページ読めたかをカウントすれば、その6倍が時速だ。
このとき、次男は10分間で8ページ読んだ。つまり、時速48ページとなり、600ページの本を通読するには12.5時間かかることになる。
一日一時間の読書なら12.5日、二時間なら、6.25日、三時間なら4.2日、四時間なら3.1日、五時間なら2.5日・・・、ということになる。
五巻まであるわけだから、夏休み中に完読するには、最低でも時速48ページをキープしつつ、一日二時間の読書時間を確保する必要があるわけだ。
「どうだ、やれそうか?」
「なんとか」
あれから四日経過した。今朝確認したら、明日中には第一巻を読み終えそうだという。きっちり一日二時間の読書をやっているようだ。
こうして、自分の読書時速をおさえておくことは何かと便利である。
<追伸>
次男の感想を聞くうちに私も『模倣犯』を読みたくなり、もう一冊自分用に買ってきた。
だめだ、面白すぎる。三日目の今日、第一巻を読み終えそうだ。
私の場合は、時速70キロ程度の読書スピード。(速読ではないので)600ページの本を三日で読もうとしているので、一日200ページ、つまり一日三時間ほど読んでいることになる。
宮部ワールドにはまってしまいそうだ。
模倣犯 http://www.amazon.co.jp/dp/4101369240/