銀行に三期分の決算書を見せたら「金を貸す」と言ってくれた。
しかも「プロパー融資」でOKだという。
通常は市や県の信用保証協会などの第三者保証によってリスクヘッジしてから貸そうとする銀行が、自行リスクの「プロパーで」というのはありがたい事で、基本的には歓迎するお話だと思う。
だが待てよ、銀行さんだってビジネスだ。「あげます」ではなく、「利子を付けて返してもらいます」と言う話だ。
しかも、返済は経費ではなく、納税後の利益の中から返済するわけだから、返済金額のざっと二倍の利益をあげないと返せない。
それがこのゲームのルールだ。
当然、ホイホイ借りて良いはずがない。経営者の側に、今借りるべきか否かを判断するシビアな基準をもっていなければならない。
「将来何かあったときのために、借りられる時に借りておこうか」
なんて甘い脇では、強靱な財務体質とは無縁の会社ができあがってしまう。今からでも遅くない、好財務企業にする決心を固め、知識武装をしよう。
それには、資金繰り的観点と、財務的観点を身につけよう。
借りる前と借りた後とを比較して、当然、資金繰り分岐点が上がる。
毎月返していくわけだから、一ヶ月に必要な売上高がその分だけ上がるのだ。
たとえば、今まで1,000万の月商で資金繰りがトントンだったものが、来月からは1,100万円の月商でないと返せない、ということが起こる。
余談だが、
損益分岐点比率とは、(平均)経費÷(平均)粗利益のことで、この数字が低いほど経営が安定している。仮に85%という数字になった時は、売上が万一 15%減っても赤字にならない、ということだ。
資金繰り分岐点とは、それにプラスして毎月の借入元金返済も加味したもので、公式は、(経費+返済)÷粗利益 となる。
その数字が90%を超えるようでは、もはや借りるべきではない。
財務的観点とは、自己資本比率がどう変化するか、借入月商比率がどう変化するか、などをチェックしよう。
借りた後でも自己資本比率は30%をキープしていたいし、借入金額の総額は月商の三ヶ月以内にとどめておきたい。月商の六ヶ月を超えだすと、すでにレッドゾーンだということを頭に入れておこう。
決してやるべきでないことは、資金繰りの厳しさを回避するためにまた借りること。
納税用・賞与用などの運転資金を借入金で賄うクセをつけてしまうと、気づいたら借金漬けになっているはずだ。
良い経営者は、良好な財務体質作りを目指すもの。
そのためには、歯をくいしばって「借りない」ことが大切だ。そして利益の中から少しずつでも歯をくいしばって「返す」ことが肝要である。
納税だって歯をくいしばって行わねばならない。
前期までずっと低調な利益だった場合、予定納税をやっていないだろう。そこへ今期、ド~ンとまとまった利益が出たとする。
税理士のアドバイスであわてて節税に走りだすも、やればやるほど、資金が細っていく。結局、慌てた分だけ節税などしなかった方がよかった、ということになる。
感情的に浮き足立って判断するのではなく、冷静に知的に意思決定するために、あらゆる角度から自社の今後を検討できるような方法を学び、そうした時間をいつでも作れるようにしておきたいものだ。