会社案内や経営方針書に「感動的なサービスを提供する」とか「顧客に満足を与える」という内容のメッセージをみかけることが多い。
では、「感動的」とか「満足」という状態はどのような状態を指し、それをどうやって定量的に測定するかという点まではっきり決めてある会社はそれほど多くない。
出来るかぎり客観的に評価できる尺度を作っておきたいものだ。
「満足度」や「感動」を数字でとらえるのは結構むずかしいが、満足したお客が結果的にリピーターになるとすれば、「リピート率」または「顧客離脱率」を測定することが効果的だろう。
平均的な企業は、毎年10~30%の顧客を失っているという。その一方で新規客開拓がその数字以上に増えていれば、トータルで客数が増加する。
新規客開拓が10%~30%確保できなけば、客数が減るということだ。そんな当たり前のことなのだが、会社経営でそれが強く意識されているケースは稀なのだ。
『自由奔放のマネジメント』(トム・ピーターズ)にこんな例が出てくる。
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今の顧客を維持することを目標にしたプログラムは大きな効果をもたらす。ある会社では、離脱した顧客に関するフィードバック情報を体系的に収集し、それに基づいて顧客離脱を防止する活動を8年間にわたって継続した。その結果、年間顧客離脱率は5%にまで低下したが、その数字は業界他社の平均値の半分ほどである。その数字そのものは大したことがないように思われるかもしれないが、利益は16倍も伸びた。
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この本によれば、離脱する顧客がわずかでも減少すると利益は大きく伸びることを指摘している。
たしかに客数を10社開拓するのと、客数を10社維持するのとでは、後者のほうがはるかに経費が少なく売上げが多く期待できる。
では実際問題として「顧客離脱率」を測定しようとすると、結構ややこしい問題が横たわっている。
それは「顧客離脱」の定義だ。
・当社のことを気に入って、バンバン注文をくれている客
・注文はくれているが、決して満足しているわけではない客
・他社へ発注が行きがちで、当社のシェアが徐々に減りつつある客
・当社が原因で、本当に他社に乗りうつってしまった客
・引っ越しなど、お客の理由で本当に他社に乗りうつってしまった客
・別の事情で発注を減らしているだけで、他社に移った訳ではない
などなど、顧客にもいろいろな状況の客がいる。私たち経営者や営業担当者は、こうした顧客の動向に関しては楽観視しがちなので注意せねばならない。そのためには、なるべく事実に基づいて数字で「顧客離脱率」を測定できるようにしよう。
ある商店経営者によれば、彼のお店ではシンプルに「1年以内に一度も来店がなかった客」を離脱者と定義した。それがいかなる理由かは問わず離脱者をそう定義したのだ。
次に離脱者の特定を行った。
どこの誰が離脱したかをエクセルファイルで名簿にしたのだ。
そして返信ハガキでアンケートを郵送し、来店がない理由を尋ねてみたという。
<明日に続く>