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老酒のような人

「ラオチュウ(老酒)はありますか?20年ものを飲んでみたいのですが」とAさん。
「僕は老酒は苦手なので、紹興酒をお願いします」と私。

ここは香港での夕食会。私のトンチンカンなオーダーを笑いながら、老酒と紹興酒は同じ意味だと教えられた。

中国では永く寝かせたお酒のことを総称して老酒という。上海老酒、蘇州老酒、福建老酒、台湾老酒などが有名で、中でも中国浙江省の紹興地区で醸造する老酒を紹興酒と呼び、フランスのシャンパーニュ地方で造られるお酒がシャンパンと呼ばれるように産地呼称の酒だ。

生ビールやボージョレーのようにフレッシュな酒も旨いには旨いが、酒はやはり熟成させたほうが旨い。永く寝かせることで糖度とアルコール度があがり、コクと丸みが増すのだ。

人材も同じだろう。
今さら若さの魅力は語る必要はないだろうが、恐れ知らずの冒険心と旺盛な体力は若さの特権だ。

だが、20年モノの老酒のように熟成した人材をどれだけ取りそろえているかが真の企業力になるのだ。

熟成した人材と年齢を重ねただけの中高年の違いは何だろう?

私は、その人が現在進行形であるか否かで判定できると思う。今、何に挑んでいるかというテーマがあるかないか、そしてその内容である。
リチャード・ブランソンが語る「冒険をやる前の学習が一番魅力的なんだ」という言葉の真意は、冒険とはギャンブルではないということだ。事前の学習と調査によって真の冒険は前もって成功しているものだ。
最終的にはやってみないと証明できないのだが、本人のなかでは成功の地図が事前に完成している。それは、経験が豊富だから完成させられる地図なのだ。

中国で高名な禅師・南陽(なんよう)は、若き丹霞(たんか)を称してこう言った。

「30年先、この男を捕まえるのは難しかろう」

要するに、30年たてばこの男は滅多に会えないほど高名な禅師になっているだろうと予測したわけだが、事実その通りになる。

真の人材が育つには、やはり20年や30年はかかるのだ。