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コンサルタントの秘密

書店のビジネス書コーナーに行くと、「こうすれば売上げが3倍になる○○術」とか「一年で収入を2倍にする△△式仕事術」など、刺激的なタイトルの本が多い。
短期間で劇的に良くなるといううたい文句なのだが、果たしてどんな奇策や秘術が書かれているのだろうかと立ち読みすると、比較的オーソドックスなものだったりする。

本のタイトルならば「3倍」や「10倍」を約束したって誰も文句は言ってこないが、経営コンサルタントが同じことをクライアントに約束してはいけない。間違っても、「おたくの会社は、私のいうとおりやれば、売上げが二倍や三倍にはなりますよ」などと言ってはならない。

なぜなら、そんな言葉を信頼するような社長はいないし、もし仮に、「この先生、頼もしい!」と思ってくれる社長がいたとしても、それは実現せずに終わる。
なぜなら、実行するのはその社長と従業員なのだからだ。

今まで自分(自社)を売り込むとき、本のタイトルのように誇大広告になっていた、と反省する方に紹介したい本がある。

いや、誇大広告の方だけでなく、コンサルタントやコーチなど、自分が提供するサービスに自ら値段を付ける必要がある人すべてにおすすめしたい本、それがこれだ。

『コンサルタントの秘密 技術アドバイスの人間学』(G・M・ワインバーグ著 共立出版)をおすすめする。

前にも一度この本を紹介したことがあるが、私にとって数少ない「殿堂入り書籍」の一つだ。

21年前にアメリカで発売され、その5年後の1990年に日本でも翻訳発売になり、以来、増刷に増刷を重ねてきた。文字数が多いために読み終えるのに時間がかかるが、読み出すとやめられなくなるだろう。

著者があるにぎやかな会合で講演をすることになったとき、どうやって聴衆を静め、講演に集中させることができるかを考え、トッサにこんなことをした。ユーモアたっぷりに著者はこう語る。

・・・
私はマイクを取ってゴホンとひとつ咳払いをし、なるべく山上の垂訓を垂れるモーセのような様子をつくり、こう発言した。

「私どもコンサルタントは、三つの鉄則をもっております。ふだんでしたら私どもは、これをお客さまにお話しするということはいたしませんが、このお席ではマネージャーのかたがたにお明かしするのが有益であろうかと存じます」

 職業上の秘密を明かしてくれると聞いて、聴衆が静まった。そこで私はこういい継いだ。

「次に申し上げます三つの法則は、すべてのコンサルタントが新しい仕事を引き受けるとき、心に留めておかなければならないものであります」
私はそれらを、ゆっくりと唱えながら黒板に書いた。

コンサルタントの第一法則
  「依頼主がどういおうとも、問題は必ずある」
コンサルタントの第二法則
  「一見どう見えようとも、それはつねに人の問題である」
コンサルタントの第三法則
  「料金は時間に対して支払われるのであって、解答に対して支払われるのではない、ということを忘れてはならない」

案の定、聴衆は完全に煙に巻かれ、ぴたりと釘づけになった。いまや全員の注意が私に向けられ、私は依頼主とコンサルタントの関係について話を続けられるようになった。
・・・

このような具体例を交え、楽しく読ませながらそれでいて人間真理の本質をついた名著なのだ。

この例のなかにも多くのヒントが隠されている。私が気づいたものでも次の三つがあった。

・一つは、コンサルタントの三つの法則が結構その通りであり、この三つは奧が深いということ
・二つめは、「職業上の秘密が聴ける」という講演前振りの有効さ
・三つめは、所々で板書を使うと聴衆の集中力が高まるということ。
 板書されると、本能的に皆がメモるもの。聴衆がメモする姿を見て、講師のエンジンも気持ちよく回りだす。

<明日に続く>

『コンサルタントの秘密 技術アドバイスの人間学』(共立出版)
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