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データ復旧の雄

パソコンが止まったら会社も止まる、データが消えれば会社も消える。ことほどさように昨今の企業経営の情報はデジタルデータ化が進んでいる。もしそれが壊れたら・・・。

そうした中、お客からハードウェアやメディアを送ってもらうことでデータを復旧し、CD-Rやハードディスクに格納して返送するサービスを手がけて急成長している会社がある。

4期連続180%の売上げ成長を続け、九州ニュービジネス協議会からは
2004年度アントレプレナー大賞を受賞した、株式会社データ復旧センター(本社・福岡市、藤井健太郎社長)である。

株式会社データ復旧センター http://www.datadoctor.jp/ 

藤井社長(29才)が、10月7日に行われた博多非凡会で興味深い講演を聞かせて下さったので、記憶をたどりながら概要を書いてみたい。
(あくまで文責・武沢)

・・・

私(藤井社長)は学生のころから事業をするのが大好きで、名刺の受注生産事業から始まってホームページ制作や出張パソコンサポートなどを手がけてきました。

そうした活動を続けるうちに、「藤井さん、パソコンが壊れてしまったのだが、中のデータを何とか助け出してくれ」というような依頼にであうことが時々ありました。
そこで当時の国内のデータリカバリー(復旧)事業の実情を調べてみると、標準化されたサービスや、価格の相場もなく売り手と買い手の交渉で価格が決められているような実情でした。
当時は相当な売り手市場だったと思います。

そんな中、アメリカにあるDRG(データリカバリーグループ)という存在があることを知り、行政機関をくどいて渡航費を捻出。
やがて同社と独占契約を結びました。私は英語もなにもできないのですが、情熱と勇気で契約までこぎつけたのです。

・・・

山口県出身という藤井社長。外からみれば知的で冷静な感じがするが、内面には長州人(吉田松陰や高杉晋作など)の熱い血が流れているのか、かなり大胆だ。

今ではデータ復旧サービスに一本化し、出張サポートは行っていないが、独自の経営スタイルを守っている。
それは、安さの追求だ。見積もりを提出するために行う初期診断には9,800円かかるが、作業を引き受けた後、もしデータ復旧が成功しなかったら作業代はもらわない。
しかも中間に代理店をもたない主義なので、価格の安さが守られているのだ。

また、納期の早さもウリにしている。技術者を社内に抱えることによって外部委託や海外委託は一切しない。だから早いのだという。ちなみに見積もりは二日以内に提出する方針らしい。

顧客の7割が法人、3割が個人で東京都内の顧客が全体の7割超を占める。
資本金が大きいので将来の株式公開予定を尋ねたところ、今は事業の発展だけに専念したいので、資本政策的なことは考慮にいれていないということだった。

最後に藤井社長がニコッと笑って「三つ自慢できることがあります」という。それは

1.29才なのに、すでに11年間も社長業をやってきたこと
2.しかも、無事平穏な社長業ではなく、大変な経験をしてきたこと
  ・社員のストライキ
  ・乗っ取られそうになり→裁判で争ったこと
  ・奥さんのご苦労(書けない)
  など
3.億単位の保証債務を20代で持っている

の三つだという。

どうしても若手経営者は技術やマーケティングにのみ心を奪われがちで、内部をおろそかにするケースが多い。だが、彼はコーチングの先生と契約し、毎月一回、全社員と個人面談してもらっているという。
その中で社長に公開してかまわない内容をレポートしてもらい、社員の最大公約数的な問題を解決していっているというのだ。

バランス感覚の良さがなせる技だろう。

「ITの利益はITでかえす」
中越地震で損害を受けた地域に対して、データ復旧の無料サービスを提供した。これからは、ITの総合セキュリティカンパニーをめざすという。

自慢話をするのではなく後輩に向かって「私の未熟な体験を教訓にして、もっと良い経営をやってほしい」というスタンスの話しぶりに大いに好感がもてた。

株式会社データ復旧センター http://www.datadoctor.jp/