名言

「いわば狂人のようなものだ。それを継之助はみとめていた。狂人でない者はこの冬、雪にうずもれ、炬燵を抱いてねむりこけるであろう。それが常識というものであり、人間のかわいらしさであり、かわいらしい人間どもは継之助を嗤うであろう。が、継之助はこの雪中を歩いている。みずからを狂人に仕立てる以外に、生きる道をさぐれない。そう、継之助は信じている」(司馬遼太郎著 『峠』上巻より)