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海外で通用する起業家をつくる

孟子のなかでも特に有名な一節。

自ら反(かえり)みて縮(なお)くんば、千万人と雖(いえど)も、吾往かん。
【読み】
みずからをかえりみてなおくんば、せんまんにんといえども、われゆかん。
【意味】
自分の胸にジッと手を当て、それが正しいと思えば、たとえ相手(敵やライバル)が千万人いたとしても、私は敢然と進んでこれに立ち向かう。

天の将(まさ)に大任を是の人に降さんとするや、必ずまず、その心志を苦しめ、その筋骨を労せしむ。

【読み】
てんのまさにたいにんをこのひとにくださんとするや、かならずまず、そのしんくをくるしめ、そのきんこつをろうせしむ。
【意味】
天は大きな仕事をまかせようと思う人物に対しては、志や意思の強さや、労力をいとわずに取り組む覚悟があるかどうかを試すものである。

こうした中国史書に登場する名言や英雄豪傑などが大好きで、その教えを人生に活かしてきた。会話のなかにも儒教、道教、仏教の教えがしばしば登場する。筒井修社長(71、香港在住)はそんな方である。

私の二冊めの小説『アジアの小太陽』の主人公としてご登場願ったわけだが、本のなかでは松浪 悟(まつなみ さとる)となっている。

「あまり他人様に自慢できる人生ではないので」と遠慮され、人物や会社名はすべて仮名になった。ところが、小説を読まれた方の反響が大きく Amazon の書評で「こんな凄い日本人がいるのですね」「これが実話だなんて」と若いビジネスピープルに大きな刺激を与えたようだ。

いや、若者だけではない。氏と同世代か、それより年長者と思われる方々からも「もう一度自分も冒険したくなった」などの声を頂戴した。

そうしたことがあってか、最近では主人公本人が Facebook などで「松浪 悟こと筒井でございます」と自己紹介されるようになり、実名公表はもはや公然の事実と思って今日の記事を書いている。

筒井修(つつい おさむ)社長は、香港の太陽商事という貿易会社の経営者である。日本の大手デパートで 40歳まで勤務され、その後、志願して香港に単身赴任した。そこから氏の面目躍如となるチャイナドリーム、香港ドリームがはじまるわけだが、詳しくは小説をお読み願いたい。

60歳ではじめた「和僑会」(わきょうかい)という組織は、氏が十年の歳月の大半をかけた。香港、中国、台湾、タイ、シンガポール、インドネシア、ベトナム、フィリピン、カンボジア…など、貿易の仕事で筒井社長がアジア諸国をおとづれると、必ずそこに日本人の若い起業家がいる。すでに成功している若者もいるが、大半は悪戦苦闘している。そうした若者の精神的支柱になるような相互支援組織を作ろうと、2005年に和僑会を旗揚げした。

私もアジアの熱気、若者の情熱にあおられて、数年間ほどだが上海にオフィスを借りて、毎月のように中国出張していたときもある。その和僑会がいまでは何千人という会員数をほこる組織になり、何十か国で活動される会になった。10年の区切りもあり、世代交代という意味から筒井会長は今年、ポストを後任にゆずられた。

昨日、名古屋で食事をご一緒した。以下、そのやりとり。

武沢:次の 10年はどんなことをされますか?
筒井:次の 10年?私もいま 71だよ。あと何年元気でいられるだろうかと無意識に考える年になった。だから、大それた野望はないが、自分を必要としてくれる人や会社があれば、喜んでこの老体を差しだそうと思う。個人的にはカンボジアなどアジアでも経済成長がおくれていた国に投資を始めている。
武沢:和僑会との関係はどうなりますか?
筒井:会長職は退いたので公式の仕事は減るだろう。だが、会で縁のあった人たちとの交友はこれからもずっと続く。昨日まで私は札幌にいたが、それも和僑会のつながりで招かれた勉強会だった。
武沢:和僑会活動で得られたものは何ですか?
筒井:タテマエの会ではないので、生々しいまでの人間模様をみることができた。一貫して哲学があり、出処進退があざやかで惚れ惚れするような人物が何人かいた。その反面で、目先の損得でしか動かない人物、自説を主張したまま頑として譲らず会を混乱させる人物、意見は立派だがイザとなれば行動がともなわない人物、大風呂敷をひろげるだけの人物、むやみに会を仕切りたがる人物、面従腹背する人物、二枚舌三枚舌を弄する人物など、まるで三国志の武将列伝のようだった。それでも概していえば、将来が楽しみな若者がたくさんいるし、その中から筋金入りの人物が何人も出てくることを願っている。
武沢:筒井社長も 30年前は若手起業家として香港に来られたばかりだったはずですが、この 30年で日本人起業家は変わりましたか?
筒井:大きく変わったね。日本丸という船に安住していては危険だという意識が今の起業家にある。私の時代などは、「筒井君、どうしてわざわざアジアなんかに行くの?出世レースにマイナスするよ」と言われたものだ。
武沢:チャレンジャーが増えているということは日本の未来は楽しみということですか?
筒井:そう考えたいのはやまやまだが、楽観はできない。学術論文で他人の原稿や画像をコピペすることが問題となったが、あれは論文だけに限ったことではない。ビジネスや人生でハタと困ったとき、その答えを書物やネットに探そうとする若者が増えている。表面的に優秀なビジネスマンほどそうした傾向が強い。
武沢:どうすべきとお考えですか?
筒井:まず、自分の頭でよく考えて見ろといいたい。安易に人を頼りにせず、ひとりでトコトン悩んでみろといいたい。脳みそから汗をかくほど自分ひとりで考え抜いたとき、始めて「和僑会」で出会う仲間達のありがたさ、他人の助言や忠告のありがみが実感できる。「和僑会に入会したらどんなメリットがありますか?」などと電話で問い合わせてくる人がいるが「真に困ってから訪ねておいで」と返答している。自分はお客だ、自分に何をしてくれるの、というような甘えた自己中心的な考えがあると海外では辛い思いをすることになるだろう。「和僑会のために私がお手伝いできそうなことはありますか?」と聞いてくるような人であってほしい。
武沢:それは和僑会だけでなく会社や学校などあらゆる組織に通じるものがありますね。
筒井:まったくその通りだね。私のつたない体験談でよかったら、いつでもどこでも駆けつけてお話しするつもりなので、ご連絡いただきたい。以前は企業講演や異業種交流会から招かれることが多かったが、最近は学校の授業などに講師として呼ばれるようになった。海外で通用する日本人起業家の養成というのが私のライフワークになっていると実感するね。

★太陽商事 http://www.jcdirect21.net/aboutus.htm
★筒井修社長メールアドレス → tsutsui@jcdirect21.net

最後にお知らせ。

筒井修社長をゲスト講師にお招きして、大阪でセミナーを開催します。テーマは「スモールビジネスで業績倍増を達成する 6大戦略」というもので、3時間のうち 2時間が私のセミナー。1時間が筒井社長のアジア起業体験談です。その後、二時間ほどの懇親会もあります。ご興味のある方は是非。

日時:2014年 8月 29日(金) 14時~17時(受付 13時半~)
会場:大阪梅田「喜望大地」研修ホール
http://gmmi.jp/company/access.html
大阪駅、梅田駅から徒歩 10分です
受講費:7,560円(税込)
★参加申し込みはこちらから
http://www.e-comon.co.jp/session/?p=4295

<筒井社長のアジアビジネス奮闘記>Kindle 電子小説 武澤 信行著

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