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変われよ!先物(さきもの)余話

卵を産まなくなったニワトリが役に立たないように、受注成果が上がらなくなった営業マンに困っている経営者は多い。適材適所とは言うものの、売れない営業マンほど処遇に困るものはないのだ。

問題は、誰がそうさせたかである。

計画的にキャリア(経験)とスキル(技能)を開発するという意識が乏しかったわけで、その半分は本人、半分は経営者の責任だろう。
そこで、営業のあり方について述べた昨日号の『変われよ!先物』に対して、さっそく商品取引企業の経営幹部と営業管理職からメールが来ているのでご紹介しよう。

・・・東京、商品取引企業幹部、男性
いつも拝読しています。
さて、私の会社では主に商品ファンドなどの金融商品販売が主力でして、無作為に個人投資家を勧誘する活動はしていません。従って昨日の「がんばれ社長!」のご指摘は我社には当てはまりませんが、世間からはまだまだ強い警戒感をもたれた業種であることは日々実感しております。当社でも、「売ってナンボ」という賃金体系がもたらす弊害があり、今後、業界内の淘汰も含めて、まだまだ変わっていかないと保険や証券など、他の金融商品販売の企業と肩を並べられる日が近づきません。(後略)
・・・

・・・東京、商品取引企業、営業管理職、男性
昨日の「がんばれ社長!」の内容に違和感を感じました。我々営業マンにどうせよ、と言うのでしょう。組合名簿やタウンページなどを使った無作為の電話アプローチは営業の基本です。効率は悪いのですが、「下手な考え休むに似たり」という方針で確率を信じて、毎日アポ電話攻勢をかけています。熱意をもってやれば必ずお客に通じます。
一日に100件前後のアポ電話をかけさせ、二日に1アポが取れ、アポが取れなくても好感触を得た客先には飛び込みさせます。週に2~3の新規口座獲得にいたればとりあえず合格です。大半のお客は一~二回の取引で去っていきます。(他所へ去るのか、投資から去るのかはわかりません)一部のお客が、ずっと長い関係になっていきます。
相当強い精神力をもった営業社員でないと長続きしませんが、生き残った社員は強者ばかりだと自負しています。去っていった社員に後から出会っても、みんな貴重な体験をしたと言ってくれています。
(後略)
・・・

営業方針にそって一生懸命に努力しているという意味で、営業マンは悪くない。いつまでも効率が悪い営業方法をとらせている営業指導者ならびに経営者に反省を促したいのだ。
営業マンは消耗品ではないし、給料ほしさに何でもやる人間でもない。
立派な人間なのだ。その証拠に、次のメールを読んでほしい。

ある地区のIT企業で営業をしているKさん(30才)からのメールで、正直な営業マンの心情が見事に吐露されている。

・・・先日のカンドウコーポレーションについて、自分自身かなり勇気付けられました。「ウソをつかない」というワンルールなど、今までで自分にとって、一番印象的な内容でした。

現在32歳で、これまでIT関係の会社を渡り歩き、現在3社目です。
「給料がもっと欲しい」ということで、26歳の時に外資系の会社に転職し、がんばるうちに給料も順調にあがり、20代で稼ぎたい目標の年俸(1000万)をもらえるようになりました。
ただ、最後は、自分の心に嘘をつきながら、営業をしていました。

最初は外資系ソフトを日本企業のあらゆる会社で使ってもらえるように、それが日本の企業の為になると、自分に信じ込ませて仕事をしていました。その気持ちだけで仕事をしていたのでパートナー企業の方々、上司も助けてくれていました。

しかしながら最後は、ソフトの品質を自分が信じられなくなり、このソフトはお客様が使わない方が、絶対にお客様の為だと思ってしまい、仕事がまわらなくなってきて、現在の企業に転職してしまいました。
いわゆる後ろ向きの転職です。

ただ、この会社で情熱を持った仕事とはこういうものなのかということを体験できたことは非常に自分にとって良かったと思っています。
そして、今回の武沢さんのメールを読んだときに思ったのが、情熱を持っていた時の私は、嘘をついていなかったということです。ソフトの品質は最初から悪かったのですが、製品がたくさん売れたら、将来は改善されるから、今は日本の実績を作ることが大切で、購入してもらったお客様にも、バージョンアップでどんどん良い製品を提供していけると思いこんでいたからです。
(日本営業所の1人の営業が生意気にもそんなことを思っていました)

立ち上げから3年経って、日本ではそれなり売れたのですが、品質がどんどん悪くなっていく一方で、その気持ちを維持できませんでした。
(成功者はこの気持ちを死ぬまで維持するから成功するんだな、自分には継続力が少ないと、あとから感じました)

今の会社では、前職と変わりなく給料はそれなりにもらっていますが、ただ単に仕事をこなしているだけであり、情熱を持っていた時の自分は居ません。そして今思うのが、自分の目標であった給料というもの、その自分の目標のレベルの低さを情けないと思ったときもありました。

仕事をするのは、自分の正義感の自己実現であり、その実現が社会の役にたてば、収入はおのずとついてくるということが分かりました。
自分の正義感(情熱)には、嘘は絶対に駄目で、その嘘が自分だけでなく他人までも信じられなくなります。

今は、大企業にいる中で、いろんな立場の人がいる為に、バランス感覚を求められていますが、やはり、社内外ともに嘘は絶対に駄目で、それが最終的には自分の身を滅ぼし、そして、もしそれが蔓延すれば、その企業を衰退させるのだなと思っています。
・・・

営業マンは自動販売機ではない。意欲と人格をもった人間として、彼らの成長・成功を支援してあげるべき立場が上司や経営者だ。そのことに改めて気づかせてくれたKさん、ありがとう。