名言

「チャップリンは幼少時代ひどい苦労をなめた。貧しさのあまり頭が変になった母とチャップリンは二人暮らしになった。父を五歳で失ったときに母は発狂した。腹ちがいの九歳の兄はこの家から逃れて船のボーイになった。五歳のチャップリンは食べるものがなくなってマーケット裏に捨てられた残パンを拾ったこともあったという。その苦労がのちのチャップリン喜劇の中でいかに生きて描かれているかがわかるのである。それにこの母が実はえらかったのである。気が静まって正気を戻すと、小さな我が子を枕辺に呼び「イエス様はお前が運命をまっとうすることをお望みなのだよ」と何度もさとした。つまり、自殺をするなということである。それは、小さな我が子にいうよりも苦しい自分にいってきかせたのであろう。思えば神様は人間をゆたかに幸せにするためにいつも苦労させるのだ」(淀川長治著「愉快な心になる本」より)

参ったなぁ。当のチャップリンはオトナになってからまるで別のことを言っている。どっちが正しいかは、貧乏と富の生活との両方を経験した人でないとわからないでしょうね。
 
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貧乏はたのしいものだと他人に思わせるのはけしからぬ態度である。貧乏にたいしてノスタルジアを感じたり、その中に自由を見出したりする人にはまだ会ったことがない。名声や巨富は拘束を意味するなどといって貧乏人を説得することはだれにもできまい。げんにわたしは富の中になんの拘束も発見しない。それどころか、わたしはその中にたくさんの自由を発見するのである。
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   (チャップリン著「チャップリン自伝」より)