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それコミット?

ソニーの社外取締役もつとめる日産のカルロス・ゴーン氏。ある経営会議の席で、利益率改善に関する目標が取締役から発表された。終始だまって聞いていたゴーン氏が最後に質問した。「この数字はコミットメントですか?」

ソニーの経営陣は押しだまった。
目標は目標だ。真っ向から「コミットか?」と聞かれて、経営陣もドキッとしたに違いない。

これは、努力目標という意味で掲げる数字と、何がなんでも達成を誓うコミットメントが混在している証だ。進んだ会社とみられているソニーですらまだそうなのだ。


居酒屋にて、隣のテーブルの会話。

A:「とうとう日本の出生率が1.33まで下がりましたよ、部長。夫婦二人がひと組になって1.33人の子供しか産まないのでしょ?これじゃ、人口は減る一方ですよね」
B:「その通りだよ、君。実にけしからん。東京では一昨年から1.00に突入したというじゃないか。君のところは、子供が二人だから出生率にプラスの貢献をしているものの、もっと我々の時代の家庭のように、5人や10人子供を産む家庭が出てほしい」
A:「そんなむちゃな。でも外国ではどうなっているのですかね?日本だけが突出して低いようなことを聞いたのですが」
B:「う~ん、どうなんだろう」

このお二人、ちょっと誤解があるようだ。出生率の意味を間違えている。出生率とは、女性が生涯に何人の子供を産むかを計算したもの。具体的には、15才から49才までの女性人口に対して、何人子供が産まれたかで計算する。従って、平均的な夫婦が何人の子供を産むかというものではない。

正式には「合計特殊出生率」と呼ばれ、今の人口を将来も維持するためには、2.08の出生率が必要とされる。


子供が産まれなくなると、少子高齢化に拍車がかかる。その結果、一人あたりの老人負担分が大きくなり、経済面にマイナス効果があらわれる。その結果、日本の国際競争力がますます悪化する。従って、出生率向上対策は国策であるべきだ。しかし、本格的な取り組みは遅々として進んでいない。

日本の出生率は1970年代前半まではずっと2.1程度で安定していた。ところが1975年以後は長期一貫して2.0を割り込み、とうとう1.33まできた。欧米では、スペイン、イタリア、ドイツが日本並みかそれ以上に低い。スペインが1.16、イタリアが1.23、ドイツが1.36だ。イギリスが1.64、フランスが1.89といずれの主要国でも人口維持に必要な2.08に到達していない。だが、アメリカだけが2.13と異才を放っているが、白人の出生率は低い。ヒスパニックと黒人の出生率が大きく底上げしているのだ。

日本では99年の年金制度改革にて、出生率を1.61に持ち直すという前提で2025年までの公的年金の財政計画を作った。ところが依然として低下に歯止めがかからず、深刻な問題になっている。政府が策定した「エンゼルプラン」(99年終了)、「新エンゼルプラン」(04年終了)という少子化対策5か年計画も、いまだ効果が出ていない。


私はこの問題に対して主張したいことは、出生率にコミットメントする担当大臣が必要だということだ。

1.担当大臣は出生率目標を掲げ、マニフェストにせよ!
2.経営者はそれに呼応して、経営面から出生率向上を支援せよ!

今のままでは、出生率低下の歯止め策に対して、誰も目標や責任を持ち合わせていない。みんながみんな傍観者ではいけないのだ。