各地の中小企業家同友会(以下、「同友会」)では、「経営指針」の成文化運動を強力に推し進めている。
同友ネット http://www.doyu.jp/
私が在籍している愛知県でも、指針成文化率100%をめざして勉強会活動が盛んだ。
同友会では、経営指針を構成するものとして、「経営理念」「経営方針」「経営計画」の三点を作るよう指導しているが、昨年、愛知県においてその実態調査を行った。
調査対象企業は2千数百社にのぼったが、回答協力が得られたのは400社強と、全体のほぼ2割。
回収率の低さゆえ、中小企業の実態を正確に反映しているかどうかは図りかねる。ある程度、経営指針づくりに関して意識の高い経営者だけから返答を頂戴した可能性があるが、その結果はこうなった。
1.あなたは「指針書」を作る必要性を感じていますか?
・はい 97%
・いいえ 3%
2.あなたの会社には「指針書」がありますか?
・理念、方針、計画の三つともある 37%
・一つ以上ある 32%
・必要性を感じてはいるが、今は何もない 28%
・必要性を感じていない 3%
3.「一つ以上ある」方が実際に作っているもの
・経営理念 50%
・経営方針 34%
・経営計画 16%
4.指針書は役立っていますか?
・はい 50%
・あまり役立っていない 41%
・絵に描いたモチにおわっている 9%
という結果になった。
この調査結果を見て、気づいたことは
・ほとんどの経営者が、経営指針を作る必要性を認めている。だが、実際に作っているのは69%である。しかも、意識の高い回答者の中での69%だから、実際にはこれより相当低い成文化率だろう。
・一生懸命つくった経営指針が、実際に役立っている企業は半数にすぎない。これを“高い”と見るか“低い”と判断するかは微妙だが、せっかく作ったにもかかわらず、半数が活かされていないという実態は何とかせねばならない。
ひとつの仮説として、経営計画の軽視もあるのではないだろうか。
質問3の回答を見る限り、経営理念 50%、経営方針 34%、経営計画 16%という比率である。むしろこれは逆であるべきだろう。
まず大切なのは、ビジネスを商業的に成立させることである。そのための経営計画でなければならないのだが、理念や方針のところで学習が止まっている可能性が高い。