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らしく育てる

小学校では、一年生は一年生らしく、三年生は三年生らしく、六年生は六年生らしい雰囲気をもっている。あきらかに体格や顔つきが違う。
また、肉体だけでなく、知識の面でも違いは明かだ。仮に三年生用の期末試験を一年生にやらせてみたら、きっと知らない漢字や計算式で困り果てるにちがいない。
それは、文部科学省の指導要綱に沿って体系的に知識教育が施されているからである。

一方、企業ではどうだろうか。一年生と三年生・六年生の違いが、外見や仕事ぶりでどの程度わかるだろうか。

ITを使ったナレッジマネジメントなどによって、知識や知恵・情報の共有化によって、入社六年生の知識でも一年生は入手できる時代だ。社歴の違いがどれだけ実力の違い・成果の違いになっているかが企業内教育責任者の腕の見せ所でもある。

文部科学省の指導要綱にあたるものを企業内で作ろう。

それが教育体系図である。この図は、縦と横のマトリックスで作る。営業、生産、管理、開発などの部門を横軸に書きだし、縦軸に新人、中堅、管理者、経営者といった、役職を書き出す。

これによって、営業部門の新人がマスターすべきことは何か、生産部門の管理者がマスターすべきことは何か、などが一目瞭然にわかる。マスターすべきことは大別すると次の三つになるだろう。

・テクニカルなスキル・・・知識や技術、習慣や態度など
・ヒューマンなスキル・・・報告・連絡・相談、リーダーシップなど
・コンセプチャルなスキル・・・企画立案、戦略や方針決定など

次に、マトリックスに記載されたこうしたスキルを、どのような手段でマスターさせるかを考える。つまり教育を施す手段を考えることになる。

・OJT(現場での教育指導)
・OFF・J・T(集合教育)
・自己啓発(読書や通信教育など)
といった視点でそれを考えよう。

まず、国内にどのような研修教育機関があり、それぞれがどんな研修を行っているかを知ろう。そのための情報集めが必要だ。あなたが所属している経営者団体から送られてくる研修案内だけが情報源では心もとない。積極的にさがそう。

以前にも一度ご紹介した産労総合研究所の『人材開発ハンドブック』には全国各地にある研修・教育団体のうち、80社ほどの情報が網羅されている。
この80社の主力になる研修メニューも紹介されているので、我社に関係がありそうなところにはハガキを出そう。

「今後、セミナーを開催される際には郵便を送ってほしい」と一度だけハガキを出せばよい。あとは、半永久的に郵便が届く。

そうして届いた研修案内のなかで、良さそうなものを社長自ら、あるいは教育部門のリーダー自らがどんどん参加し、我社の定番研修にすべきか否かを判断してくるのだ。生き残った研修は我社の教育体系図に書き込まれる。

こうした形で時間の経過とともに完成度が高まっていくものが教育体系図なのだ。これに則って一年生は一年生らしく、中堅は中堅らしく、管理者は管理者らしい実力を培っていくのだ。