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続続・山村社長の頭痛

さて、先週水曜日号の続き。まずは、過去2話の要約を。

山村精工所の山村社長(61才)は、創業時のメンバーである伊藤工場長(51才)と木村営業部長(48才)の処遇に困り果てていた。なぜなら、彼らに会社の取締役をまかせてはいるものの、経営者としての、ものの考え方や知識に乏しいのだ。製造部門と営業部門の部門長としては信頼しているが、両名とも後継社長を任せられるような実力には達していない。むしろ、気力・体力の両面において若手の突き上げを食らい、彼らをどのようにして再び活性化させることができるのかと、思案することが多くなってきたのだ。

ところが、両人を呼び出して近況を尋ねても、彼らからはそうした問題意識があがってこなかった。部門長としての自覚しか持ち合わせていない。自分が伸び悩んでいるという自覚がないようなのだ。


「長期的に経営者を育てていくべきだとは分かっていても、業績第一主義でやってきたからなぁ。それに、経営者を育てるということがどういうことなのか・・・?いずれにしても私の責任だな。」

社長の山村は内心で忸怩(じくじ)たる思いをしている。

とうとう、山村は二つのことを決断した。

まず、「従業員意向調査」を実施すること。全社員から今の仕事の状況や職場のことを直接聞き出すことを思いついた。また、その結果に関係なく、大胆な人事異動を実施することにした。

「従業員意向調査」とは、社長から社員に直接実施するアンケートのことだ。
その書式を山村は武沢から受け取っていた。Aサイズのこの書式には次のような質問項目が並んでいる。

・氏名、住所、生年月日、今年の満年齢
・既婚、未婚と家族構成
・入社年月日と在社年数、現職場での経験年数
・現住所から今の職場までの通勤経路と所要時間
・今、あなたが担当している仕事について
  ◇とても満足している ◇満足している ◇普通 ◇不満
  ◇とても不満
  その理由(                       )
・今の職場の人間関係について
  ◇とても良好 ◇良好 ◇普通 ◇不良 ◇とても不良
  その理由(                       )
・あなたの職場の上司は誰ですか(        )
・あなたの上司のリーダーシップについて
  ◇とても適切 ◇適切 ◇普通 ◇不適切 ◇とても不適切
  その理由(                       )
・あなたが今後、社内でやってみたい仕事は
  ◇営業 ◇開発 ◇製造 ◇総務人事 ◇経理 ◇配送 
  ◇その他(                       )
  その理由(                       )
・あなたが社内でもっとも尊敬するのは誰ですか
  (                           )
  その理由(                       )
・あなたは今後一年以内に会社を辞める予定がありますか
  ◇いいえ ◇はい(  年 月頃) ◇わからない
  その理由(                       )
・どのようなことでも結構です。社長に直接意見や感想があればお書き下さい。

この「従業員意向調査」は、社員全員に配布され、期限までに同封の返信封筒にて社長親展で返送される。毎年1~2回、定期的に実施するものだ。この調査内容を、今後の人事の参考にする。

また、武沢から聞いた“環境適応論”によれば、同じ仕事を18ヶ月以上続けると人の成長は止まるとのことだ。伊藤・木村両氏には120ヶ月も同じ仕事を担当させていたことを反省し、異動を発令することにした。

伊藤工場長を開発部長に、木村営業部長を工場長に、これまで営業部課長を任せていた松岡(39才)を営業部長に昇格することにした。「従業員意向調査」の結果次第では、若手社員も今後定期的に異動させるかもしれない。

企業規模によっては、異動をさせるほどの組織が出来ていないこともあるだろう。だが、それでも客先の担当を変えることや組むメンバーを変えるなど、組織をかき回す方法はいくらでもある。

さて、この稿で申し上げたかったことは、

・組織にはピーターの法則が働いている
・18ヶ月以上同じ仕事をさせてはいけない
・従業員意向調査のようなもので、社長は、全社員から直接意向を聞
・中小企業は、社長みずから全社員のキャリア開発に責任をもとう

ということだ。