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運と愛嬌

ある社長に、どんな人を社員に採用するかを尋ねた際、「最終的には好きになれる人を採用しています」との答えがかえってきた。この会社では、実技試験や面接試験もあるが、最後の判断は“好きになれるかなれないか”だそうだ。

この採用基準は正しいと思う。

社長は、好きになれない人間を部下に雇ってはならない。採用のミスによって、もし万一嫌いな部下をもってしまったら、即刻雇用契約を解除すべきである。そのために試用期間があるのだ。

社員旅行が大型バス二台以上の規模になれば、一人や二人くらい嫌いな部下が混じっていても何とかなる。だが全員に目が行き届くような小規模であるならば、嫌いな部下をもつことは社長も部下もお互いの不幸である。

「好き嫌いで人を採用して良いのか?」と言われれば、断然「YES」なのだ。
そこで大切なのは、その好き嫌いの判断基準をどこにもつか、である。あなたにも好きになる人と、なれない人がいるはずだ。その違いについて考えたことはおありだろうか。

月刊『経営予測エイジ』最新12月号のトップ記事が面白い。「愛嬌」についてだ。“松下幸之助は愛嬌で人を選んだ”という見出しで次のような逸話を紹介している。

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松下政経塾設立時はすべてが手探りだった。どのような人を採用して、どのように教育すればよいか、ということから始めなければならなかったのだ。そこで当時の選考委員が松下幸之助氏に何を採用基準にするかと意見を求めたところ、一言。「運の良さそうな人がええなぁ。それに、愛嬌のある人やな」との答えが返ってきて選考委員もびっくりしたという。
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『経営予測エイジ』 http://www.yosoku.co.jp

たしかに「仕事ができそう」という採用基準も大切だ。まったく仕事ができないし、やる気もないのに愛嬌があるだけでは心もとない。またどんなに運の強い人でも、その人と社長とが価値観を共有できなければうまくいかない。

だがそれでもあえて、まず「運と愛嬌」を基準に掲げたところに松下幸之助の流儀がある。松下氏自身の成功の理由が、「学歴・金・健康がなかった」ことと言われるが、それゆえに人間個人の力の限界を知り抜いていたに違いない。

運や愛嬌というもので人を引きつける力があれば、知恵も情報もお金もチャンスも自ずと巡ってくるということか。

愛嬌や可愛げがあるかどうかは誰でも判断がつくだろう。だが、運があるかどうかを見極めるにはどうすべきか。

それは本人に聞くのが早い。

「あなたは今まで運が良い方でしたか?悪い方でしたか?」「なぜそう思いますか?」

運が良い人は、自分がいかに恵まれてきたかをうれしそうに語るだろう。運が悪い人は、自分の薄幸ぶりをもの悲しげに語るだろう。